TOPIC⑤:アイテムを入手しよう! ②・その3
「ここに、たからものがあるんですか?」
二人が訪れた部屋は、先ほどまで探索していた木造の部屋と打って変わって、灰色の石造りで固められた、地下の一室。
ロウイーターと戦った部屋にある隠し扉から、続いていた。
「そうそう、この木箱の中にある日記帳が目的の宝物さ」
賢者は迷う事なく、しれっと宝物を手に取る。
周囲に気を配っていた勇者は、堂々としている賢者を見て、そそくさとそれに近づく。
「なにが、かいてあるのでしょう?」
「そういえばこれ、領主に中を見ないでくれと言われるせいで、中身は確認できないんだよなぁ……」
故に、エクストラストーリーの中でも、この日記の内容は大きな謎として語り継がれていた。
ファンの間でその中身について憶測が飛び交い、内容について二次創作する者まで現れたり、一時それは盛り上がりを見せた。
しかし、結局のところ、その内容について公式的な回答は無く、未だに謎のままである。
「僕らは別に、中身を見てはいけないなんて、言われてないもんね」
「そもそも、りょうしゅさまに、あってすらいないです……」
ならば問題はないとばかりに、賢者は好奇心丸出しで日記を開く。
"◯◯刻月××刻日
ついに親父にバレた。
村の子供を攫ってる事が。
ヤバいと思った。でも親父は助けてくれた。
なんとか隠蔽してくれるらしい。もう二度と攫うなと言われた。
難しい話だ。
子供はいつも通り遊んだ後に美味しくいただいた。食べ物は粗末にしてはいけない。"
"◯◯刻月×◻︎刻日
大人を子供にする魔術書を手に入れた。
これはすごい。これならうまくやれる。バレない。
今度はうまくやったつもりだったのに、またバレた。しかも食事中のところを見られた。
親父は青ざめていた。
地下に閉じ込められた。
暗い。"
"◯◯刻月×◯刻日
抜け出して、また子供をいただく。いつも通りいい感じにやっていたら、またしても親父に見つかった。
もう隠蔽もできないとか言う。
俺を殺すつもりらしい。なんて怖い人だろう。
なんとかして身を守らないと。
親父の書斎に忍び込んで、何冊か身を守れそうな魔術書を持ってきた。
霊を体に憑依させて、身体を強化するらしい。
ちょっと怖いけど、これでどうにかなりそうだ。"
" 刻月 刻日
あ つ
たすーーーーーーーーー……
"
インクの線が、ズルズルとページの端まで引かれ、そこで日記は途切れている。
「これは……」
賢者は右手を顎に添え、小さく考え込む。
日記帳を持つ手は胸元の高さで止まっており、小さな勇者はその内容を未だ確認できずにいた。
「けんじゃさま、わたしも、わたしもよみたいです。けんじゃさま」
スーツの端をくいくいと引っ張り、自己主張する少女。
「うーん、ごめん、これは読ませられないかなぁ……」
システムで不可能なことを行い、不具合が起きる可能性もあるかもしれないと考えた賢者。
内容が過激すぎることも鑑み、勇者の精神状態を安定させるため、この場での閲覧にストップをかける。
当然のように納得がいかない勇者だったが、これを読むと王様に会えなくなるかもしれないと言われ、好奇心を納めた。
賢者は日記帳を懐にしまい、ひとまずこの場を後にする。
こうして、勇者一行は『領主の宝物』を手に入れた。
某ファンサイトで公開されていた『領主の息子』という"二次創作"が綴られた、本来ならば閲覧できないはずの日記帳を。
---TOPIC⑤・その3 Fin---
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