概要
三国志の時代から下ること二百年。中原には異民族が割拠し、漢族は旧呉の地へ退去を余儀なくされていた。そのような中を這いあがってきた男がいた。男の名は、寄奴。のちの南朝宋の建国者、劉裕である。
寄奴には、かれを陰に日向に支えてきた一人の男がいた。この物語は、その男――丁旿を介し、語られる。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!寄奴って男ァとんでもねェタマだったぜ──「腕」が語る成り上がり武勇伝!
劉裕という剛勇無双のゴロツキがのし上がっていく、
破天荒で痛快でスリリングな国盗り武勇伝である。
語り手である丁旿の口調が軽妙なヤクザ風なので、
劇画タッチの不良漫画みたいな「絵」が頭に浮かぶ。
丁旿ら昔馴染みの間で、劉裕は「寄奴」と呼ばれる。
2人や仲間たちは流民の家柄でろくな仕官先もなく、
そもそも彼らの町も国も荒れ放題、国と国は戦続きで
まさに弱肉強食の様相を呈している。乱世だった。
中国史において五胡十六国時代と呼ばれる頃の出来事だ。
が、年号の把握だの官制の理解だの漢名の書き取りだの、
世界史の授業で頭を悩ませたような面倒事は放り出して、
とにかく、ゴロツキの成り上がり武勇伝を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これがほんとの『武勇伝』だ……最強の男・劉裕の成り上がり戦記!
丁旿という男の視点から寄奴(劉裕)がのし上がっていく様を語る物語です。
舞台は五胡十六国時代の中国なのですが、知識がなくても、荒れ放題の中国の町、北方から迫りくる強い異民族の軍団、己が腕を頼りにのし上がっていく漢民族の漢たち――男たちの熱いドラマが展開されていくのをはらはらしながら見守っているうちに読み終わってしまいます。
硬派な歴史小説!というより、青年誌に載っているハードボイルド漫画のノベライズのような雰囲気で、とても読みやすいです!
とにかく、出てくる野郎どもがみんな魅力的です。
私は特にトゥバ・ギと崔宏の主従コンビがお気に入りで、ひょっとして最後は彼らがラスボスとして立ちはだかるの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!崔宏先生(先代)「流民から身を立てて東晋を簒奪した劉裕をご存知か?」
三國時代を統一した司馬炎の晋、
短期間に河北を失って呉の国都であった建康に
遷り、史上に東晋と呼ばれることになります。
この時、琅琊王氏の王敦、王導の協力があり、
さらに、江南は孫呉の頃から豪族が力を持ち、
その結果として東晋は後漢と同じく豪族に
支えられる連合政権という形になります。
この基盤が孫呉、東晋から宋、齊、梁、陳と
つづき、350年以上つづく六朝貴族社会を
形成したわけです。
当然のように門閥主義、あたりまえに貧富の
格差が極限まで拡大された江南にあって、
寒門と呼ばれる低い身分から帝位に即く人間が
現れるとは、一体誰が予想できたでしょう。
それを成し遂げたのが本作の主人…続きを読む