soda

このストーリーの最初の一行目から最後の一文字まで、ずっと雨が静かに降っているような気がした。
実際のストーリーの中ではそんなことは決してないのに、何故だろう、音もなく、雨がずっと降っている。
ターコイズブルーの淡いフィルターがかかった画面の中で、砂浜が、波打ち際が、水平線が、静かに濡れて行く。
エッジの立った波すらも、その輪郭を曖昧にする雨。
雨に優しさがあるとすれば、こんな形なんだろう。

由比ヶ浜、片瀬、鵠沼。
そういう湘南のメジャーどころではなく、三浦半島の付け根の少し洒落て、少し穏やかな。あの街の雰囲気がテキストの向こうから透けてくる気がしました。

同じ街を舞台にした、『神様のボート』という小説を思い出しました。

短い文章の中に、波乗りや飲食店の説得力ある断片が、ただただお洒落なだけでない、上滑りのない地力を感じさせました。

とてもとても、素敵でした。
ありがとうございます。

話というよりも表現が水のように滑らか！これがホントに文章が上手いというのだと改めて思いました。

海のそばで暮らしたことがない私に
波の音を想起させてくれる、揺れるものがたり。

爽やかだなんて言ったら、愛夏ファンにわかってないって
怒られてしまうかな。でも、それを承知で、
ここに置かれたものが 多重な感情だってわかっていて、それでも
この話を読んでいる間、ずっと私は清々しかった。
きっと、sodaの魔法にかかってしまったんだろう。

苦み、苦しみさえも、鮮やかに飛び込んできた情景。
ね、打ち明けて、受け入れて、そういう相手なら大丈夫。
時間に入り込んで、私も海辺で過ごして見守っていたよ。

サーフィンを通して、若い男女が惹かれ合いながら、遠距離恋愛をなんとか乗り切っていく（あっ、シャレではありません）、ラブストーリーです。

若い二人を見守る周囲の人々も、とても丁寧に描かれており、共感を呼びます。
描き方によっては暗くなりがちな主人公の心情ですが、最後までぶれずにきっちり一本の筋が通っているため、読み手が感情移入できる物語に仕上がっていると思います。

各章のタイトルもサーフィンに関わる単語か用いられ、とてもお洒落な印象です。

若い二人にエールをおくりたくなる、秀逸な掌編です。

悲しみを受け止めてくれる相手と出会い、少しずつ歩み寄りながら成長していく二人の姿が、海を巡る美しい風景と共に繊細に描かれていました。
たとえ遠く離れていても、心の支えとなる相手を信じ、思い続けた1年があったからこそ、新たなスタートを切ることができたのだと思います。とてもいい読後感の作品でした。

どこなく寂しげな、爽やかな雰囲気が感じられました。
暗い重い気持ちも、全て受け入れる、懐の深い海……。
愛する自然が、その人を作るんですね。

ざあざあ降っていた雨が上がって、雲間から陽射しが差し込んで、やがて海が明るく輝き出す…。そんな、細やかなきらめきを湛えた作品です。

透明な空気の中で、少しずつ確実に変わっていく季節やひとの心が大変繊細に描かれます。読み進めるほどに、心が洗われていくような爽やかさ…作者にしか出せない魅力的な味わいに溢れています。

さり気ない文章が、人に恋をして、やがて愛するようになっていくきらめきをこんな風に伝えてくれる…そのことに、心が震えました。

読んだ後、心が穏やかに凪いだような…そんな心地よさを味わわせてくれる、大変魅力的な作品です。

愛夏さんの作品は、私にとって心地いい。
不幸せというか、過去に傷をもつ人が少し前を向く瞬間でスーッと閉じられる物語。
特別なことは何もなく、変化する一瞬を切り取るようにシャッターを押す。
ファインダーの中で、なかなかピントが合わず、ボヤーッとした世界が続いて、フッとピントが合った一瞬で終幕する物語。
その写真に閉じ込められた物語を読んでいる感覚になる。
私の頭には、剥がれた白いペンキの木製テーブルに置かれた古い水色のワインボトル越しに見える静かな海岸、そんな絵が浮かんでいた。

僅か8話2万文字強の中で繰り広げられる青い時の痛み、ひりひりと焼け付くように、それは既に完全に塞がっていた筈の、自身の若き日のかさぶたを剥がし続ける。読んでいてこんなにも痛く辛かったのは初めてだ。　同時に、自身の中にこれほどまでに　まだ昇華し切れない青春の欠片が残されていたことにも　初めて気付いた。
誰もが幸せになりたいんだ、誰かを愛していたいんだ、と文面のあちこちから叫びが聞こえる気がした。　

そしてなぜこれが恋愛ジャンルではなく、現代ドラマなのかもずっと考え続けた1週間だった。　いまでも明解な答えを見出したわけではないが、今後自分が創作を続ける上で、大変重要な示唆を頂いた気がする。そも…続きを読む