ざあざあ降っていた雨が上がって、雲間から陽射しが差し込んで、やがて海が明るく輝き出す…。そんな、細やかなきらめきを湛えた作品です。
透明な空気の中で、少しずつ確実に変わっていく季節やひとの心が大変繊細に描かれます。読み進めるほどに、心が洗われていくような爽やかさ…作者にしか出せない魅力的な味わいに溢れています。
さり気ない文章が、人に恋をして、やがて愛するようになっていくきらめきをこんな風に伝えてくれる…そのことに、心が震えました。
読んだ後、心が穏やかに凪いだような…そんな心地よさを味わわせてくれる、大変魅力的な作品です。
僅か8話2万文字強の中で繰り広げられる青い時の痛み、ひりひりと焼け付くように、それは既に完全に塞がっていた筈の、自身の若き日のかさぶたを剥がし続ける。読んでいてこんなにも痛く辛かったのは初めてだ。 同時に、自身の中にこれほどまでに まだ昇華し切れない青春の欠片が残されていたことにも 初めて気付いた。
誰もが幸せになりたいんだ、誰かを愛していたいんだ、と文面のあちこちから叫びが聞こえる気がした。
そしてなぜこれが恋愛ジャンルではなく、現代ドラマなのかもずっと考え続けた1週間だった。 いまでも明解な答えを見出したわけではないが、今後自分が創作を続ける上で、大変重要な示唆を頂いた気がする。そもそもジャンル分け自体がナンセンスという説もあるが、もしこれが恋愛ジャンルだったら私自身の読後感はまた違ったものになり得た可能性もある。やはり さすが、である。
カクヨムでこうした作品&作者に出会えた幸福に感謝したい。