姉と妹の戦争
リーマンショックが起きたが、南ノ方サマと前の老松長者により、切尾商会は傷口を最小限に抑えることができた。この成果をもって、南ノ方サマは切尾内のイニシアチブを得ようとしたが、西ノ方サマにはばまれた。南ノ方サマは、西ノ婿殿、前の東ノ婿殿とむすび、他勢力を抑えつけようとしたが、西ノ方サマが同意しなかったため、西ノ婿殿が加わることができなかった。
南ノ方サマと西ノ方サマの対立が鮮明になり、切尾の混乱は、南ノ方サマにつく側と西ノ方サマにつく側との争いに集約されていった。
前の老松長者は二人を呼び出して訴えた。オカアサマがご長女と争われたようなことがないようにお願いいたします。家中のため、姉と妹のような関係になければならないあなた方が争われるというようなことはあってはなりません、と。
南ノ方サマと西ノ方サマは話を聞き、自分たちはもともと争ってなどおらず、婿どもが勝手にはじめたことであり、婿同士を仲直りさせれば争いは収まるだろうと、返答をした。
老松長者が席を外したときに、南ノ方サマは、本来の筋であれば前の西ノ方サマの長女である西ノ方サマが切尾を差配するのが適切だと投げかけた。つづけて、私のものを私に返しなさい。そうすれば、あなたのものをあなたに返しましょうと言った。対して西ノ方サマは、手に入れてみればつまらぬものだったが、いまさら返してどうにかなるわけではないでしょうと、ささやくように言った。
前の老松長者は二人の婿殿を呼び出し、いさかいをやめるように諭した。二人はその場では了解したが、別れるなり、それぞれの側近と切尾商会の株主総会に向けて打ち合わせを行った。切尾商会の執行役員から敵を除くべく、両陣営の多数派工作が表面下で行われた。
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