分社分業

 オバサマは、自らも巻き込まれた母子戦争での委任状闘争をかえりみて、切尾商会の株式保有者を絞り、譲渡に制限をかけた。

 オバサマの存命中、切尾商会の株式保有者は、最終的に七名まで絞られる。

 本家および東西南北の当主、労働組合、老松長者である。保有株式の割合は、本家が三十八パーセント、東西南北の当主が各十二パーセント、老松長者が十一パーセント、労働組合が三パーセント、であった。

 老松長者とは、オカアサマの代に切尾家へ婿入りした初代老松の、一人娘の血を引く者たちの代表のことである。今は形骸化しているが、本家の家宰は老松長者が務めることになっていた。

 合わせてオバサマは、切尾商会が行っていた各事業を子会社化し、運営を各分家に分担させた。

 東は軍需にかかわる新製品の開発や特許の管理にかかわる事業群。

 西には玉枝市に関する事業群。

 南には各種製造工場の管理にかかわる事業群。

 北には軍用品の営業に関する事業群。

 オバサマは、各子会社の経営の責任者には、切尾の血を引く者を置いた。しかし、その執行の責任者を選ぶ際には、切尾の血は考えなかった。子会社の方向性は切尾の者が決めるが、その実行者は能力があればよいとした。オバアサマやオカアサマの血が薄い、もしくは血をひかない執行責任者たちは、切尾家よりもオバサマ個人に忠誠をむけた。

 金融業や政治対応は、本家が担った。

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