当世三人

 前の西ノ方サマの権勢がさかりであった時分、切尾には当世三人と称される女たちがいた。三人とも未婚であり、彼女たちの婿取り次第で、切尾の次の流れが決まった。

 切尾の者は、それぞれの特徴から呼び名をつけた。

 一人目、二代前の東ノ方サマの長女はシロヒメ。

 二人目、前の西ノ方サマの長女はシズカヒメ。

 三人目、前の南ノ方サマの長女はカガヤクヒメ。

 シロヒメは世に絶えた美女と謳われていたが、子供の時から、おさななじみに心を奪われていた。

 その男は東の一族の出で、容姿は並みであったが、他人の才を見抜き、人を使うのがうまかった。中国の劉邦に彼をなぞらえ、リュウノキミと呼ばれていた。

 二代前の東ノ方サマは、シロヒメとリュウノキミとの結婚を望んだが、リュウノキミの返事はかんばしくなかった。当時、リュウノキミは彼を長年抑圧していた兄弟と祖母が続けて死に、はじめて生を楽しんでいたので、すぐに結婚をする気にはなれないでいたのだ。

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