婿取り

 オバアサマの時代に、切尾家は尾張の筒内家から婿をもらった。明治の動乱期は商いの舵取りがむずかしく、一時、切尾商会も傾きかけた。そのため、豪商であった筒内家から援助を受けるかわりに、婿を受け入れた。これが混乱を生んだ。

 婿は有能であったが、生家の権勢を背景に、切尾の家政に口を挟んだ。自分の縁者を婿として切尾に招き入れ、影響力を高めた。

 切尾家内は、オバアサマ側と筒内の婿側で争いになった。その騒動自体は婿の死により収束したが、筒内の婿を縁に持つ分家は勢力を保ち、今に続いている。

 以降、婿取りの際、切尾家では権力に関わりのある者を避けるようになった。

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