母と娘の戦争
オカアサマは、片腕と呼ばれた老松が死んだのを期に引退する。
当主を継いだのは長女だった。しかし、長女はオカアサマと実権を争い敗れ、家督を継いで一年で死ぬ。ふたりのいさかいは母子戦争と呼ばれている。
オカアサマは、当主に戻った三年後に死んだ。長女の生んだ孫娘を後継者に指名し、長男に当主代理として権力を与えた。現在、長男は切尾の者からオバサマと呼ばれている。
時は高度経済成長期であった。しかし、オバサマは、事業の拡大よりも家内の統制に力をいれた。理由は二つあった。
母子戦争で生じた家内の混乱が続いていたため。
切尾家が男にひきいられるのが初めてであったため。
オカアサマの遺言により、オバサマに権力はあった。しかし、そのことが逆に示すように、死んでもオカアサマに権威があったのに比べ、彼には権威が足りなかった。オバサマは、寡黙で貴族然としており、有能なだけでなく、人の話をよく聞き、怒ることもなく、驕ることもなかった。しかし男だった。
権威のないオバサマは、切尾のそれまでの慣例を重視する。彼は切尾家内の調停者としてふるまいながら、自分が治めやすいように少しづつ切尾家を変えていった。
オバサマは、四つの分家を本家に次ぐものとして引き上げることに注力する。目的は味方にするためであった。
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