安良巻祐介

夢見ることの好きな者にはたまらない、箱庭に吊られた火入りの月を想うような、或いは現実にはない印象派の地球につかのま遊ぶような、不可思議なる一画家の世界への案内。 何か空虚な心の隙や…続きを読む

胸に詩を宿す全ての者が抱える、脆く透き通った心象を、一匹の黒い蟻の姿に仮託して描いた鮮やかな寓話。
シジンの小さな帽子は、読み終えたものの心の中にも、淡い染みとなって残るでしょう。

日本国全ての鶏に降って沸いたる災禍…そこから始まる、悲劇的な喜劇、或いは喜劇的な悲劇の連鎖。笑い涙誘う蛙の受難。逆とんとん拍子とでも言いたくなるような、奇にして妙の糸車で紡がれてゆ…続きを読む

かつて山の獣肉の隠語であった「ももんぐわ」は、いわゆるお化けの異称でもありましたが、言葉遊びの境を越えて、この世あの世の妖怪を皿の上へと乗せてしまう名店と、まさか本当に出会えようと…続きを読む

玻璃質の脳髄にも似た〈驚異の部屋〉から産された、この精緻な宝石箱の中には、星が、月が、太陽が、山水が、雨が、雪が、稲光が、鳥獣虫魚が、春が、夏が、秋が、冬が、その他様々な美しいもの…続きを読む

闇の中から淡々と蒸留され、この世に滴り落ちてゆく、「怖さ」の一滴たち。 妖しく輝くそれらに指先を触れると、何かが静かに凍りついてゆくような… 「小さな話」であるゆえに、振り向いたど…続きを読む

小さく精緻な四つの舞台がそれぞれぱっぱっと電気の灯りで点いたり消えたりしているような、明滅の物語。個人的にはメッセージよりも質感を堪能したい一篇です。

友人の姿とその生涯、彼が置いて行ったものを通して、命とその傍らにあることを美しく描き出した佳編です。

曼殊沙華を鍵に綴られる軽妙で素敵な奇想。
シリーズとして読みたいような気もしました。

「みんな」への幾つかの決まり事、そこからふと覗く違和。平仮名で綴られた柔らかい言霊が、「コト」と「モノ」の境界を曖昧に蕩かせてくれます。

作者様の培って来られた筆遣い、色彩の描写や、光の質感が縦横に発揮されているように思われます。 そして、これは「あなた」の物語。団栗や林檎のランプの下、月を待ちながら、蜜のグラスで乾…続きを読む

確かな言葉選びと淡く綺麗な筆遣いに、心地良く酔うようなまどろむような心地になります。読むことの楽しさ。