カーテンの隙間から差し込む光でまどろみから覚めた。
あれ? ここはどこだろう?
ふかふかのベッド、肌触りのいいタオルケット、大きな枕もふわふわだ。
半身を起こしてカーテンを開けると、初夏の涼しい風が吹き抜けた。
……これ、誰の部屋なの?……って、痛っ! アッタマ、痛っ……
疑問に続いた頭痛に昨夜の記憶がよみがえる。
そう。盛大に酔っぱらっていた。
うん。思い出した。辞表たたきつけて、会社辞めて、お酒をガンガン飲んだ。
で……それから……なんか変な兄弟と意気投合したのだ。
なんかやたらと顔がよくて、人懐っこくて、でもバカそうな兄弟だったような。
と、扉の向こうからなにやらにぎやかな話声が漏れてくる。
ああ、この声、この話し方、そして仲良さそうな笑い声。
どうやらその兄弟にくっついてきてお泊りしてしまったらしい。
あちゃー、やってしまった……
と反省に浸る間もなく、いきなり扉が開かれて当の兄弟が現れた。
「起きたみたいですね、朝ごはん、用意したんです、一緒にいかがですか?」
と聞いてきたのは兄貴のほう。クールな雰囲気でかなり背が高い。
二日酔いのテンションにはまぶしすぎる笑顔とさわやかさだ。
「兄貴の作る目玉焼きは絶品なんだぜ、食べなきゃ損だぜっ!」
といきなり距離を縮めてくるのが弟君のほう。
背は低いけれど、こちらもすごく整った顔立ちをしている。なのに、いきなり懐に入り込む人懐っこさは破壊力抜群だ。鼻血が出そうになってしまう。
そして二人して笑みを浮かべてあたしの返事を待っている。
ここは年上のお姉さんとしてなんか話を盛り上げないと……
「ありがとう。そういえば、目玉焼きっていつも何つけて食べてるの?」
「もちろん醤油です」とは兄。
「ソース一択っしょ。ウスターソース」と弟。
答えた瞬間に二人の視線がバチバチと火花を立てた。
あれ。なんかまずいスイッチ押したかな?
なんて思ってるとこの兄弟、顔を近づけてこう聞いてきた。
「お姉さんはもちろん醤油派ですよね!」とクールに当たり前のように兄。
「ソースにきまってるよ、ねっ?」と期待たっぷりに目を輝かせる弟。
うぅぅ。朝からなんだこの二択は?
まぁ、ここは諍いを止めるためにも正解を教えてやらねばならない。
「目玉焼きにはね……」