薄暮堂（はくぼどう）

街の片隅に、誰も近づかない古びた店がある。
お化けが出るという噂もあるその場所に、少年は住んでいる。
けれど本人(主人公)もしゃべる猫ユウも、その店が何の店なのかを知らない。

そこは、現実と夢のあいだに漂うような、不思議な空間。
店内は常に夕暮れの光に満たされ、外の音は一切届かない。
棚には“誰かの記憶”のような品々が静かに並んでいる。

ときどき訪れる“お客”は、誰もがどこか、何かを忘れている。
少年はただ話を聞き、時に言葉をかけ、あるいは何もせずに見送る。
彼自身もまた、思い出せない記憶と共に暮らしているのだから。

これは、記憶と心にまつわる、静かでやさしい物語。