第12話 やべぇ
北村視点
バリアで攻撃が防がれ、魔族は少し驚いたようだった。
しかし一方のおれも、その想定外の強さに焦る。
まさかバリアが一撃で破られるとは…!
次のバリアを発動するまでに5秒はかかる。
万事休すかと思ったその時、彼方から何か飛んできて、魔族の右腕を切り飛ばした。
え?
飛んできた方を見ると、屋根の上に誰かが、いる。
魔族もそちらを見ると、「やべぇ」というような顔をして、一目散に、その屋根の人とは反対方向に駆け出した。
なんだ?
そう思ったのも束の間。いつの間にか魔族の横にその男がいて、剣を振るう。
魔族は何とかそれを受け、しかし吹き飛ばされて、家の中に突っ込んだ。
……家が崩れ、その砂埃の中、動く気配は何もない。
「逃げたか」
魔族を追っていた男がそう言うと、こちらに振り返った。
◇ ◇ ◇
「騎士団長。助かりました」
あの後、ドランさんが起きてきて、その男に話しかけた。どうやら男は騎士団長らしい。
「どうしてここに?」
ドランが尋ねると彼はこう答えた。
「たまたま仕事帰りでな。魔力もギリギリだったし、逃げてくれて助かった」
「すみません。自分が不甲斐ないばっかりに」
「いや……それより今日は、異世界人達と街に来ているんだったか?」
「はい。彼らがそうです」
そう言って、ドランさんがこちらを指すので、おれは前に出て挨拶した。
「どうも。助けていただき、ありがとうございます。北村です。よろしくお願いします」
「そうか。君が北村か。おれはルーシスだ。よろしく頼む」
◇ ◇ ◇
魔族視点
ある日、城に潜入中のアンジェラから、近く異世界人が街に出るという話が入った。
魔族としては次の2つの意見に分かれた。
ひとつ。これを機に異世界人達を一網打尽にすべきだという意見。
ひとつ。これは明らかに罠だ。様子見に留めるべきだという意見。
議論は白熱したが、結局のところ、魔族を1人だけ送り込むことになった。
理由は単純。
戦力がなかったから。
魔族は先の戦いで大打撃を受け、その戦力の多くを失った。
これ以上貴重な戦力を削るわけにはいかないのだ。
故にひとりだけ、武術にも魔法にも対応できる、魔力吸収の魔族、ザンディが敵情視察に行くことになった。
◇ ◇ ◇
ザンディ視点
魔王様に言われて、アンジェラの寄越した情報を元に、異世界人達を見に行くことになった。
罠の可能性もあるらしい。面白い。この俺が罠ごとぶち壊してやるぜ。
そう意気込んで、朝から晩まで、異世界人達を見ていたが、期待外れだ。
奴ら、てんで弱そうで隙だらけ。1番期待できそうなのは、恐らく奴らの護衛役の騎士か。
こりゃ、罠の可能性はゼロだぜ。魔王様。
そう心の中でごちつつ、折角なので彼らを殺していくことにした。
まずは奇襲をかけ、一番厄介そうな騎士を倒す。多少はやるようだが、俺には敵わない。
すぐに無力化し、異世界人達の方を向く。こいつら、怯えてやがるのか? つくづく期待外れだぜ。
そう思っていたら、ひとり前に出てきた。命知らずが。
しかしそいつも中々剣ができるようだった。意外とやるな。俺は奴らの推定戦力を上方修正しつつ、魔力を吸い取っていく。
やがて魔力がなくなり、そいつの動きが極端に鈍くなった。
これで終いだ!
そう思って振るった拳は、すんでのところで、何か硬い壁に阻まれた。
なんだ? これは?
そしてそう思う間もなく、おれの右手が吹き飛んだ。
あれは……騎士団長‼︎
こいつはやべぇ。魔王様。やっぱり罠でした。助けてください!
おれは必死で逃げ、運良く近くに来ていた仲間の魔族に助けられた。
はぁ。死ぬかと思ったぜ。
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