第14話 国家試験受けなくたって良いんだよ
原田さんはスーツをバッチリ決めて資料を机に置きマイクを手にした。
「鍼で男性不妊症が治るのではないかと言う壮大なテーマに対し私達は体をはった実験に挑んだ」
と言ったところで会場はドッと湧いた。
原田さんの発表は自信に満ちて堂々としていた。
「絶対、僕たちの研究が一番ですよね」
と18歳の山崎は顔を紅潮させて言う。
「最優秀研究賞は、小森班の“なぜ鍼で筋肉が緩むのか”です」
と発表され私達は肩を落とした。
「鍼刺したら筋肉緩むって当たり前じゃないですか!それより、東洋医学のツボで不妊が
治るって言う方がアカデミックなのに…」
と山崎が言うと
「小森班はきっと私達より頑張って研究したんだよ」
と原田さんは笑った。
卒業研究発表が終わるといよいよ、国家試験へのカウントダウンが始まる。
国家試験の模擬テストが開催された。
試験が終わり採点結果が出た。
惨憺たる結果に不安がつのる。
担任の先生から呼び出しがかかった。
「伊丹君、この成績では国家試験は合格できないよ」
「はぁ」
「やる気はあるのかね?」
「はい、あります」
「何なら今回は受けなくてもいいんだよ。来年と言う手もある」
「頑張りますので受けさせて下さい」
「私が言ってるのは合格率の問題なんだよ」
「合格率?」
「そうだよ、専門学校は生徒を合格させてなんぼなんだよ。伊丹君が受験すると合格率が下がる。すると入学志願者が減る」
そこまで言わなくてもいいのにと私は下を向いた。
「よっぽど三浦先生にしぼられたようですね、伊丹さん」
「合格率が下がると学校の人気が下るから来年受験したらって言われたわ」
「来年やったらもっと合格率下がりますから今年受かりましょ。大丈夫です、僕がこれから毎日、国家試験クイズを出しますから前向きに行きましょ」
「ありがとう、福井君」
「僕の言うた通り過去問やりまくったら、定期試験で赤点取らへんようになりましたやん。その調子で国家試験もクリアできますって」
「ほんまにありがとう」
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