第11話 学び有り解剖学の実習で
私はその理論に、はてなマークがいっぱいだが今までの解剖学や生理学とは別の世界が広がって行くように感じた。
「そしてまた人間の体は陰と陽のバランスが崩れたときに病になるのです」
これはなんとなくわかった。
そのなんとなくはワクワクに変わって行く。
現代医学が匙を投げた病気でも東洋医学で治る事もあると言われ、私はますますロマンを感じた。
付属治療所でこの治療法を早く使いたくてたまらなくなった。
私は浅田先生に教わった通りの手順をふんで付属治療所で治療を始めた。
まず主訴を聞く。
そしておもむろに患者さんの脈を診る。
「『チャングムの誓い』でこのように脈を診ていますよね」
とよく患者さんに言われる。
脈を診て体のどの部分に異常があるかを察知する。
「脈診三十年」と言われるくらい脈診は上達するのに時間がかかる。
しかし経験が一年の者には一年の、十年の者には十年の診断力がつく。
経験が一年の者が病気を治せないと言うわけではなく、学び始めた時点で精一杯努力すれば、その努力は報われる事が多い。
それが東洋医学の醍醐味である。
「ここが痛いです」と言う所に鍼を刺して置いておくだけの治療はなんとか卒業できた。
鍼灸専門学校には解剖学実習もある。
医科大学の解剖研究室の見学が許可される。
献体はホルマリンに浸けられたのち解剖研究室に置かれるので独特の匂いがする。
私は福井君と青木君の三人の班で見学した。
「この筋肉ってこうやって重なってんねや」
等の発見があった。
見学が終わり福井君が
「伊丹さん、飯行きません?」
「ええねえ、青木君はどうする?」
「僕はあのホルマリンの匂いにやられてますんで遠慮しときますわ」
「そうか…残念やなあ。何食べよ福井君」
「焼肉がいいです」
「焼肉うぅ?あの解剖献体見学の後やのに…僕にはヘビーやし麺類にせえへん?」
「しゃーないなあ、そうしましょか」
と青木君を車に残して私達は蕎麦屋に入った。
「今日は有意義でしたね、解剖学実習」
「ほんまやわ。鍼灸専門学校に入ってなかったらこんな経験はできへんもん」
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