第12話 最新鋭!精子観察顕微鏡
「伊丹さん、解剖学のテストで赤点続きやったんは、人体のイメージができてへんかったのもあると思いますわ」
「そうやね。今日の実習でかなりイメージできるようになったわ」
「それは良かったですね。この調子で国家試験も受かりましょうね」
「そうやね。その前に卒業研究発表があるからそれも大変や」
「ほんまですね。題材はなんでもええって言われると幅が広すぎてよけい悩みますわ」
私と福井君は話に没頭した。
「あっ青木君を車に残してるの忘れてた」
「ほんまや、急いで車に戻りましょ」
車に戻ると青木君は爆睡していた。
卒業研究発表の班作りは、なかなか難しい。
ただの仲良しグループではいけないし、かと言ってウマが合うメンバーでなければ、はかどらない。
そんな時、同い年の原田さんが声をかけてくれた。
「伊丹さん、以前からやってみたかった研究があるんですけど一緒にやりません?」
「どんな研究ですか?」
「鍼で男性不妊症が治せるかどうかです」
「面白そうですねそれ」
「でしょでしょ。サブタイトルは“鍼で精子が元気になった”です」
「入れて入れて」
と私は二つ返事でその研究グループに入った。
鍼を下腹部のしかるべきツボに刺して15分程置いておくと言う実験の毎日が始まった。
メンバーは当たり前だが10代、20代、30代の男ばかり。
専門学校の校⾧先生に男性不妊の研究室を紹介してもらった。
母校の医科大学で教え子がが研究を続けているという。
私達は早速、挨拶に行った。
「初めまして、和漢鍼灸専門学校の原田と申します。そして今回の卒業研究のメンバーです」
「渡辺先生の生徒さんですね。先生には今もお世話になっています。私でお役に立てる事があったら何なりと仰ってって下さい」
研究室の教授はとても物腰の柔らかい方だった。
「こちらが精子を観察する顕微鏡です。プレバラートに乗せてパソコンのスタートボタンをクリックするだけで、精子の数、運動量、運動スピードが一目瞭然でわかります。そしてデータは数値化されて比較検討が容易です」
と教授は言った。
その後、一週間に一回、自分達の精子を採取して研究室に持って行き、データを集める作業が始まった。
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