ドイツ車に乗りたい鍼灸師
@J0hnLee
第1話 やめよかなこんなにノルマがキツイなら
仕事から帰って来ると妻がリビングで寝そべって苦しんている。
「吐気がする、気持ち悪い」
「背中擦るわ」
と私は妻の側に座った。
しばらく擦っていると
「楽になったわ、気持ちええわ」
と、しばらくして妻は生気を取り戻した。
妻は二人目の子を身ごもって3ヶ月目だ。
「つわりは3ヶ月までが辛いっていうもんな」
「それもそうなんやけど…」
「それもそうって他に理由あんの?」
「ウ~ン、えーっと」
「何ためらってんの?」
「かっぱえびせんを一袋開けてしもた」
「やめられないとまらない…やな」
「うまいこと言うてんと、もうちょっと擦って」
と言いながら妻は寝息を立て始めた。
この時、自分の手で人が楽になる事に、えもいわれぬ喜びを感じた。
今日も仕事に行く気がしない。
営業職はこれほどノルマに苦しまされるとは思わなかった。
入社した時、「売上をクリアしていたら仕事中に映画を観に行けるのだから良い仕事だよ」
と先輩に言われたがクリアなんて夢のまた夢だ。
「もうやめようかな、こんなに苦しいんなら。所⾧にゴミ箱ぶつけられるし、毎日一時間の説教は耐えられへん」
「あんたがそうしたかったら辞めてもええよ。そやけど今日は大丈夫やって。お腹の子がパパ頑張ってって言うてるのが聞こえるもん私。今日は説教されへんはずや」
「そうか、そんなん言うてるか。泣き事いわんと頑張るわ」
と私は玄関を出た。
ところが今日も所⾧の説教はあった。
よりによって二時間、ぐったり。
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