第8話 歓迎デビュー
あ……ありのまま起こったことを話すぜ……。
俺は政府に目をつけられて何か勇者パーティーのようなもののサポート役として契約していた。ここまでは百歩譲っていいだろう。少年漫画的なテイストで美少女が悪と戦うというのは見ていてとても楽しいジャンルだし、何より一度助けた美少女達が辛い目にあうのは見たくない。
というかそんな目にあわせる前に未遂だろうが◯す。絶対に◯す^^
しかしだ――今俺は美少女達と一緒にファミレスの四人席にいる。ちなみに俺は湊ちゃんの太ももの上でプカプカと浮いている。男ならばこの空間にいる時点で極刑が確定し、美少女の太ももに触れたならば無期懲役が下されるのだが、俺の今の身体は女。だから精神的にまだ男でも無罪。恐らく司法でも裁けないはず……!
「これ頼んでいい〜?」
「湊さん、言っておきますがこの歓迎会の費用は割り勘ですからね」
「けち」
「はぁ!?」
「三月ちゃんなら出してくれる!」
「私達ちゃんとお給料貰ってるじゃないですか!しかも結構高額な!今使わずしていつ使うんです、か!!」
「バンッ!!」
よし……なんとなく状況を理解し始めてきた。つまりこうだ。気がつけば俺がパーティーに入った事を祝う歓迎会に連れて行かれ、そこで美少女達の微笑ましい光景を見せられている。今は修羅場のようかも知れないが。
すぅぅぅ……。美少女の勢いで頭がどうにかなりそうだ……。
「まあまあ〜二人とも落ち着こ〜。あと美央ちゃん机叩かない」
「そ……そうです。ここファミレスですから(震え声)」
「す……すいませんでした……」
「ごめんねゆゆちゃん」
元気っ子属性、ツンツン属性、ママ属性、コミュ障属性……くっ、数々の美少女を見て、誰よりも美少女に憧れたこの俺がこの雰囲気に押されている……。いや何も喋っていないだけか。
「ね「あ、そうだ!美央ちゃん何か天精氷ちゃんに言いたいことなかったっけ?」」
「あ、思い出しました!そうです私達の自己紹介を――」
「あ~。そういえばやってなかったね~」
俺は雰囲気を察して言葉を発そうとした口をつぐみ、再び傍観に徹する。
「私は
「私は
「次は私ですね~。私は
「えと、あの……私ですね。わた……私は
やっぱみんな個性つええ……しかも俺がやろうと思って演じたクール枠は既に美央ちゃんが埋……ってはいるはずだ。多分。
くそ、それぞれの関係性のバランスが良くてこんな完璧に属性の埋まったパーティーに参加するだなんて、俺のデータにないぞ!?でもやるって言っちゃったし、書類にサインしたし……こうなったら、辛うじて被らないであろうミステリアス枠に入ってやる!
顔が童顔?そんなの関係ねぇ!ミステリアスにおいて大事なのは『はいよちよち天精氷ちゃん可愛いでちゅねぇ♡』ってキャラ崩壊四コマ漫画で子供扱いされてカリチュマブレイクしないほどの覇気と威圧感だ!
「最後は私ね。……それじゃあ改めまして」
俺は湊ちゃんの太ももの位置から移動し、全員を見下ろせるようにファミレスにはよくあるアクリルの仕切り板、その一段下にある木材のちょっとした壁に腰掛ける。
そして声帯は通常より少し低めに絞り、覇気を出すためになんかこう……他のお客に迷惑をかけない程度に魔力を漏らす。
「私の名前は天精氷。種族は氷の妖精で、ジョブは……そうね。バッファーをやらせてもらうわ。私のような魔物を飼いならせるのか……ふふっ、よろしく頼むわね」
足を組んで頬杖をつき、顔を斜め五度ほど傾げながら口元には薄く笑みを浮かべて何か得体の知れないもの感を演出する!
perfect……。俺の姿がどう映っているのか今すぐ確認したいのが懸念点だが……。
「ゴクリ……」
視界に意識を移すと美少女達の視線はこちらに釘付けとなり、元気っ子でさえもだんまりして生唾を飲み込んでいる。どうやら、ミステリアス美少女デビュー、俺の勝ちのようだな――
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