第3話 恐怖と対話
「やりすぎた……」
妖精らしくプカプカと浮遊しながら、そう呟く俺の眼前には、『魔石』と呼ばれる宝石の山が、まるで俺が今まで倒してきた魔物の量を教えるように高く積み上がっている。
いや、俺もこうするつもりは無かったし、最初の頃は半ばヤケクソの気持ちでレベリングに臨んでいた。
でも、やってくうちに強くなっていって、後半は敵も余裕でワンパンできるようになって……。気付いたらこれなんだよ。
「この絵面シュールだよな……大量の魔石と美少女妖精ってどんなだよ」
この光景は誰が見ても間違いなくドン引きする。俺だってドン引きする。
よし、この魔石達は何個か持ち帰って残りは放置しよう。そうしよう。
「少しは大きそうな奴を選んでと……」
俺はぱっと見大きそうな魔石を何個か素手で持つ。
「よし、ではさらば――」
とっととダンジョンの出口に向かおうと、俺は振り向く。
「……」
するとそこには、豪勢な装飾の入った黒い鎧に身を包んだ男を筆頭とした四人のパーティーがいた。
――終わったぁ!!
☆★☆
それはまだ誰も攻略していない、Cランクのダンジョンに潜っていた時の事であった。
目の前に広がる光景に、俺たちは驚いていた。
俺たちの目の前には、宙を浮いた小さな妖精が魔石の山に近づいて何かをしている光景が広がっている。
「おい。あれ、どうするよ」
仲間の一人が、認識阻害の魔法がかかった黒いフードを深々と被りながら、小声でそう聞いてくる。
「どうにもこうにも、あの妖精が怪しいだろ?聞くしかねぇんじゃねえか?」
俺も小声でそう返す。
「そ……そうか」
仲間は引き気味な声でそう答える。チラリと他の仲間の様子を見てみると、あの妖精に対して萎縮しているようだった。
「……」
流石に不味いか……そう思って妖精の方に視線を戻したその時だった。
「……?」
こちらと同じタイミングで振り返ったのか、妖精の持っさらりと短い空色の髪が揺れ、そして深海を彷彿とさせる暗めの水色の瞳と目が合う。
「……っ!?」
その時、一瞬だけ恐ろしい量の魔力が視認でき、それと共に強烈な悪寒がした。
俺は本能で剣を抜き、妖精に向かって構える。
「え……あ、え?」
妖精は俺が突然剣を抜いた事に驚いたのか、戸惑いの表情を見せる。それは俺の仲間達も同様だった。
「ちょ、龍輝!不味いって!」
「そうだ!アレは流石にやべぇ!」
「うん……私も賛成」
俺が妖精に攻撃しようと思っているのか、三人は声を掛け、そのうち二人はさらに俺の身体を掴んで止めにかかる。
「分かった、分かったから」
俺は剣を鞘に戻す。
「……お前は、誰なんだ?」
我ながら酷くストレートな質問をする。恥ずかしい事に、さっきの妖精の魔力を見てしまった時点で、俺のメンタルはボロボロらしい。
「……
天精氷と名乗る妖精は、そう聞いてくる。
「ああ、敵じゃないよ」
仲間達に目を向けると、いい判断だというばかりに首を縦に振る。
「そうですか。えっと……なら、ダンジョンの外まで連れて行ってください」
……はい?
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