第11話 帰宅レスト

「ふぅ……もう足と手がクタクタだよぉ」

「最近はアナザーゲートの平均難易度が軒並み上がっていますからね~。そのうち初心者や攻略者研修生が入れなくなってしまう、との予想もあるみたいですね~」

「おかげで今まで攻略できたダンジョンはおろか、あふれ出たアナザーゲートの鎮圧にも時間が掛かりますね」


 空が茜色に染まる夕暮れ時。

 あの後、ダンジョンはほぼほぼ二人の手で攻略された。美少女が最強なのは言うまでも無いこの世の真理であるが、それにしても美少女っょぃ。

 そして今は湊ちゃんが「私達の家においでよ!」と提案されたので、地上に戻ってきて、その家とやらに案内してもらっている最中である。

 私……つまりはシェアハウス。戦う美少女達の何気ない日常の一幕……これは妄想が止まらなくなってしまうな。ご馳走様です。


「今日は帰ったら早く寝よ〜!夕ご飯の当番って誰だったっけ?」

「湊さんですね」

「うげ……」


 湊ちゃんは早めに寝たいのか、自分が当番だと聞いて苦い顔をする。よく顔を見た所、瞼が下がりかけててウトウトしてるし、見るからに疲労度は高そうだ。

 よし、ここは美少女見習いである俺の出番だな!


「そんなに嫌なら私が作るわ」

「……っえ?アクちゃん料理出来るの?」

「人並みには出来ると思うわ」


 美少女を目指すならば料理とかの一芸は持っておかねばならない。少なくとも俺はそう自負している。

 とはいえ、昔はまだなりたい美少女の属性が決まってなかったから、取り敢えず満遍なく得意な事を増やしていって、そこからなりたい美少女を決めようとしていた。

 その名残が今日の美少女ライフで美少女の役に立てるのなら、これほど光栄なことは無いだろう。


「魔物でも料理するんだねぇ……よし!それならば今日はアクちゃんの「ちょちょ湊さん!?」何だい美央くん。私は疲れているんだよ?」


 任せる気満々の湊ちゃんを止めるように、美央ちゃんが口出しをする。


「一応、アクさんは新人の立場ですし、いきなり私達の仕事を押し付けるのもどうかと思うんですが?」

「アクちゃんが私を思って提案してくれたんでしょ?その善意は甘んじて受け入れなきゃアクちゃんに失礼だよ〜?」

「ぐ、ぬ……当番表はみんなで決めたルールじゃ無いですか?それに提案したのは湊さんでしょう?言い出しっぺがルールを破るなんてあり得ないですよね?(怒)」


 うむ。これはシェアハウスに着くまで続くな。



☆★☆



 そうして着いたのは、通常の二階建て一軒家より敷地面積がやや大きめで小さな庭の付いた、三階建ての一軒家であった。


「着いたぁ!!もう無理寝る!!」

「ちょ、湊さん!せめてお風呂に……って、ああもう!」


 お高い家に付いているインターホン付きのゲートをくぐった後、まるで子供のように湊ちゃんは扉を開けて家に駆け込んでいく。

 それを止めようと美央ちゃんも続いて入っていった。


「わ、若い女の、女の子達の青春の一幕……ふへっ、ふへへ」

「あの子はいつもこうなのかしら?」

「あ~……歩夢ちゃんはちょ~っとそっちの人らしいのでぇ。まあ気にしないであげて下さい」


 恐らく俺と同じ、いや。似通った道を歩む『戦友』に心の中で敬礼しながら、俺達三人は家の中へと入る。


「あ、アクちゃんは……そういえば裸足でしたね~」


 そういえば俺裸足だったね。これは何か得した気分。


「後でお風呂でよく洗いましょうね~」


 わりぃ……やっぱつれぇわ……。(歓喜)


「ま、まずは……ご、ご飯食べてから」

「そうですねぇ。先にお風呂に入りたい気持ちもありますが、今日はまだ沸かしてないので先にご飯いただいちゃいましょう~」

「なら台所まで案内してくれるかしら」

「あら、結局アクちゃんがやるんですか~?」


 あたぼうよ!美少女見習いとして、ここで一つ役に立ちたいんでい!


「ええ」

「分かりました。それじゃ案内しますねぇ~」


 ふふふ……俺の飯テロ級の料理に度肝を抜かれるといい――

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