第17話 戦後シルバーワールド
リミットブレイク。それは人間が無意識に掛けている力の制限を外して本来以上の力を出すこと。日本語では「火事場の馬鹿力」なんて呼ばれていたりする。
そしてそんなリミットブレイクが、今俺にも訪れようとしていた。
動体視力が向上したのか、敵の攻撃は遅く感じ、かつ自身の身体はより強くなったような、そんな感覚を確かに感じる。
何だか物語中盤に手に入りそうな超能力だが、どうやら美少女の神が俺につよつよ美少女妖精になれと後押ししてくれているかのようだ。美少女に感謝。
「理解すら出来ずに消え去るといいわ」
一先ず獣からの攻撃を避け、俺は前回のような「決めゼリフを言ったのに倒しきれなかった」という最大のヘマをしないように、魔法陣を複数個出現させて、オーバーキル並の火力を出そうとする。
いや……まだ足りないな。この魔法陣じゃきっと足りない。
「ギ……ギギ……」
俺は魔法陣を圧縮し、一つに纏める。何やら魔法陣の方から鳴っちゃいけないような幻聴が聞こえるが俺は気にせず、圧縮に圧縮を重ねる。
そして、圧縮が終わった頃。そこにはひび割れた状態で完成した、白い宝石の形となった魔法陣があった。
「
俺がその呪文を唱えた時、俺が持つ魔力の八割ほどが捧げられてその魔法が発動する。
最初に圧縮に圧縮を重ねた魔法陣が光を纏い、そして白い煙を出し、部屋全体を一瞬で覆い尽くす。
「カッ、パキッ……」
そして限界に達したのか、魔法陣はガラスが割れるような音を立て、その後白い煙の中を稲妻の如く駆け巡らせるように、銀色の魔力を放って砕け散る。
やがて視界は無数に駆け巡る魔力で一面覆われ、魔力が輝きを失い視界を取り戻した頃には、白色しか存在しない銀世界に包まれた部屋が見えていた。
「ほぅっ」
俺は息を吐くと、部屋の色のせいで見えにくいものの白い息が出る。恐らくとてつもなく寒いのだろうが、俺の肌は寒いと感じていない。
「サクッ……」
魔力を少しでも節約したいので浮遊を解除して地面に降り立つと、そこには真っ白な雪が積もっていた。
「ふるふる……!」
俺は寒いと感じていないにも関わらず、自身の身体を震わせる。
理由は、ごく単純だ。
「ロマン砲、めがっさ気持ちええ……」
気分は有頂天、さながら麻薬。
おいおい、こんな最強美少女ロールプレイが合法で楽しめて良いのかよ……。
「ほあぁぁぁ……」
あ〜心がぴょんぴょんするんじゃあ〜^^
今過去最高で過去が顔が緩んで惚けている自信あるわ。そりゃ緊張の連続だったもんなぁ……。
もう下半身の力も抜けて立てねぇや……あ゙ぁ゙……。
「――ん?」
顔を上げてリラックスした瞬間、不意に下半身に生暖かい水が流れるような感覚がする。
「ん???」
俺は嫌な予感がしたのでカッパとドレスみたいな服をめくり上げ、下の方を見る。
そこには薄黄色に輝く、黄金水が白色の下着に染み込み、やや黒く染め上げている光景が見えていた。
「……?」
俺は今の自分の状況が理解できずに黙り込む。その最中でもその黄金水は流れ続け、やがて膀胱の中にある黄金水の貯蓄は空になっていた。
「ふ……」
しばらく時間が経ってようやくこの状況を理解してきた俺は、無意識に何かのスイッチを入れる。
「ふぇ……」
やりきったという達成感からか、それとも今目の前に起きている光景に刺激されたのか、俺の涙腺は緩み、視界を滲ませる。
「ふぇぇぇん……!」
――そして一面の銀世界の中で残り、悲しげに泣く一人の幼女が出来上がった。
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