比嘉純恋
俺たちは部室に向かっていた。5人で行動するのは初めてだった。
桜と美穂と並んで歩いたのはいつぶりなんだろう。あの頃は仲が良かった。楽しかった頃。
部室に着く。3人共はふわふわしていた。ドア開けると先客がいた。
「遅いねー君たち。やる気ある?」
沙也加先輩がいた。いやいや、なんで普通にいるねん、生徒会長でしょそんな簡単に来ることある?。てっきり部活に入るのはいいけど少ししか来ないかもなんて言うと思っていたのに、案外忙しくなさそうだった。それか有能でもう仕事は終わっているのかもしれない。
俺と雪は平然と入り、3人は固まっていた。今目の前にいるのは全員が憧れるほどの存在だ、その人が目の前にいる。
「今日から入部すことになりました。九条毅です」
他の人たちも挨拶をして、部室に入ってきた。みんなの挨拶に優しくよろしくねと沙也加先輩は言う。多分美穂と桜はわからないだろう。
沙也加先輩は俺が中学の頃仲が良かった。比嘉純恋(ひがすみれ)の姉だということを。今は俺だけが知っている。正直どう関わったらいいかわからない。けど、向き合わないといけないい。
「さて、部員も6名になったし今日は何をするんだい部長の誠さん」
沙也加先輩が言う。
「依頼がない以上何もすることがないんですよ。」
「そうなのかい、せっかく楽しみにしてたのに」
「まあ、今日は親睦会的な感じで」
「親睦会?いいねじゃあ、昔話でもしようじゃないか、な、誠君」
意地悪をしてるのか、それとも性格が悪いのか。
正直、今この状況で昔話はダメだ。二人が傷ついてしまう。それと、親睦会で話すような内容じゃないこれは俺と沙也加先輩の問題だ。
「昔話は今度話しましょ、ゆっくり」
周りの人たちはどうしてみたいな顔をしていた。俺がおかしい人と思っているだろう。それでもいいただ今は話題を逸らすしかない
「わかったよ」
鋭い目つきで俺を見つめていた。数秒後笑顔に変わっていた。恐ろしい人だな。比嘉沙也加。
その後は他愛もない話をした。誕生日はいつとか、好きな食べものとか。そうこうしてるうちに下校時刻になっていた。
「はあーいっぱい笑ったよ」
沙也加先輩は言う。他のメンバーも楽しかったと言う。実際俺も楽しかった。しかし、雪だけが楽しくなさそうにみえたのは多分俺の勘違いだろう。
俺と桜と美穂が同じ道なので一緒に帰ることにした。3人で帰るのはいつぶりだろう。
沈黙が流れる。
「なあ、桜と美穂は今日楽しかったか?」
正直二人が無理をしているんじゃないかと思った。沙也加先輩はこの二人に何をするのかわからない。
「楽しいよ」
二人が言う。
「そうか、もし俺に対して罪の意識があるならもう大丈夫だぞ」
二人が部活に入ったのは償いの気持ちだと思っている。そんな気持ちで入ってもすぐに退部するだろう。
「それは違うよ、私はもう逃げないって決めたの絶対に最後まで信じて傍にいるって」
美穂は泣きそうになりながら言った。続けて桜も言う
「私もよ、最後まであなたの味方でいるって決めたの」
二人の気持ちに嘘はないと思う、けど、だめだ、心が拒絶してる、あの頃には戻ることはできないと。
「そ、そうか」
そうか、しか言えなかった。それから会話はなかった。ふと、スマホを忘れていたことに気がついた。
「ごめん、忘れ物したから学校戻る、先に帰ってといて、じゃ月曜日に」
逃げるように走った。四月だというのに風が冷たく感じた。
学校に着くと職員室だけ明かりがついていた。職員室でカギを取ろうとしたけどなかった。あれ、と思い部室に向かった。
なんと、部室には明かりが点いていた。部室のドアを開けると、沙也加先輩がいた。足を組みながらこっちをみる。
「あら、来るの遅いじゃない」
待ってましたよ、みたいな顔をする。
「えーと、スマホ返してもらえますか?比嘉沙也加先輩」
「私の苗字いえるのね、言える資格なんてないのにね」
鋭い言葉に心が壊れる。
「そうですね。俺には資格はないでしょう。けど、逃げる資格もありません。つまり前に進むしかないんです」
「前に進むね、ふざけてるの誠君。いくら進んでもあなたの罪は消えないよ」
「はい、わかっています。」
「わかっているね、それは嘘よ。今日だって女子を二人連れてきて反省なんかしていないじゃない、きっとあの子たちも傷ついて死ぬよ」
死ぬよと言う単語を聞くと呼吸ができなくなる、胸が痛い、涙で前が見えない。
「ごめんなさい。ごめんなさ...」
「はい、はい、ごめんなさいしか言えないね」
彼女は鋭い目つきで俺を見る。なあ、俺はどうすればいいんだ。今すぐに消えたい。俺は何を間違えた。純恋と出会ったこと自体が間違えなのか。よくないことばっかり浮かんでしまう。その考えはダメだ。今の俺は普通ではなかった。
「なあ、俺はどうしたらよかったんだ?」
「どうしたら、よかったって決まってるじゃない、あなたが生まれなきゃ」
俺は倒れる。沙也加先輩の方を見ると泣いていた。
「じゃ、また明日」俺の方にスマホを投げて帰ってしまった。スマホは画面が割れていた。
呼吸もできるようになり落ち着いてた。スマホの画面を見つめる。そして、俺は言う、俺は生きる資格あるのかな。
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