新しい風
俺はいつから雪という架空の人物を作っていたんだろう。
※
あの時は心に余裕なんてなかった。実際自殺しようと考えていた。
そして俺は死のうと思って行動に移した。放課後の教室は時計の音しかなくて、静かだった。外から見える景色は、野球部やサッカー部などが部活をしていた。見るだけで涙がでそうだった俺も部活をしたかったから、あの噂が流れてから関わる人がいなくなった。いつも遊びに行く友達、放課後に部活に行こうって言う友達みんな消えた。孤独を味わった、どんだけ噛んでも味がしなかった。けど、噛むしかない地獄だった。俺は、飛び降りて死のうかと考えた。ここで死ねば少しは変わるかもしれない、俺に対しての評価が。けど、死ね前に学校を探検したくなった。もしかしたら誰かが助けてくれるかもしれない、そんな淡い期待を胸に秘めて教室を出た。
最初は図書館に行くことにした。本を読むのが好きでよく借りていた。余命系の小説や、ミステリーなどの本をよく借りていた。図書館に入ると、肌寒く感じた。ここで、あの人に出会った。もう今は会うことさえできない。やっぱり図書館は落ち着ける場所だ。いつも静かで騒ぐ人もいない、周りは勉強をしている人たちしかいない。そんな考え事をしていると、入り口から新崎桜たちが入ってきた。俺は急いで隠れた。話し声が聞こえてきた。
「ねえ、誠の噂知ってる?」
後ろにいる女の子が言った。すると、桜は
「私は噂なんかで人を判断しない」
桜の言葉には凄く感動した。けど、次の言葉を聞いて失望した
「けど、もう誠と関わるのはやめるかな」
あまりにも衝撃的な言葉だった。
なあ、生きるってなんでこんなに辛いんだろう。俺は彼女たちをお構いなしに走って
図書館からでた。
すれ違う。驚いた表情で見ていた。もうどうでもいい、こんな世界なんか嫌い、嫌い、嫌い。
急いで屋上に行った。楽になりたい、心が壊れる前に。フェンスを越える。風がヒューヒューと強くなる。怖くなってしまった。誰か助けてくれ、誰か止めてくれ、もう大丈夫だよって言ってくれ、誰か
「ねえ、何してるの?」
後ろを向く、そこには見たことのない人が立っていた。
「死のうとしてるんだ、こんな世界なんかいても、何もいい事なんかない」
「大丈夫だよ、私がいるから」
「大丈夫ってなんだよ、」泣いてしまった。とにかく泣いた、体の水分が無くなるほどに。
どうやら彼女は、上野雪という名前で同じ中学2年生みたいだ。それが、彼女との出会いだった。
俺は彼女に依存していた。放課後毎日屋上に向かった。生きる理由ができた。学校に行く理由ができた。もう周りなんか気にしないで好きなように過ごした。噂なんかで人の評価を変えるような人と仲良くなる必要なんてない、そんな気持ちで毎日過ごした。しかし、不思議なことがあった。俺は1回も屋上以外で雪を見たことがなかった。
今日もまた彼女に会うため屋上に向かった。その時声を掛けられた。
「誠、待って、あなた最近おかしいよ?ずっと屋上に行ってるし、独り言も喋ってるし、何かあったの?」
桜が言ってきた。少し前は好きだった人の言葉はもう届かなかった。無視をして階段を上る。
「ねえ、聞いてる?私は誠が心配だの」
心配という言葉に反応してしまった。
「なあ、心配って本当に言ってるのか?」
「本当よ、心配してるよ」
「心配ね、でも、もう遅くないか、あの時図書館で言ってただろ、もう関わるのはやめるかなって、だから、俺もお前と関わるのはやめた、迷惑を掛けるじゃないかなと思って、関わるのはやめた、なのにどうして声をかけてくる?」
声が響きわたる。
「ごめん、私は怖かったの周りに合わせてた。逃げてたの、全部許してもらうなんて考えてない、けど、あの頃みたいに二人で笑いたいよ」
泣きながら彼女は言う。泣いてる姿を見ても何も感じなかった。むしろ怒りが沸いた。泣いたら、許されるのか?
「もう、遅いよ。お前らしくていいじゃないか周りに合わせるの、じゃ、俺は行くから」
嫌味だしく言った。
「まってよ、お願い」
聞こえていたが無視をした。周りにはいつの間にか人が多くなっていた。もし、彼女がこれ以上変なことを言ったら彼女も嫌われてしまうかもしれない。まだ、俺にも優しい心があったんだな。後ろから聞こえてくる声は、可哀そう、誠って最低だな、そんな言葉ばかりの罵声だった。
屋上のドアのドアノブを握る。いつもは開いてるのに今日は開いていなかった。もしかしたら、雪が来るかもしれないので待つことにした。30分待っても来なかった。今日は帰ったんだろう。それか、俺の噂を聞いて関わるのをやめたか。俺は1つ考え事を思い浮かんだ。俺と関わったら嫌われてしまうかもしれないだから、雪とも関わるのはやめよう。明日屋上に行って言おう。もう会うのはやめようって言おう。
それから、毎日屋上に行ったが、彼女は来ることがなかった。まあ、彼女も噂を知って俺と関わるのやめたんだろう。当時はそう思っていたのに。
※
高校の屋上から見える景色を見ながら昔のことを思い出していた。そっか、心が弱っている時に俺が作り出した架空の人物なんだ。上野雪は。
今考えるとおかしいとこもあった。屋上以外で見たこともなかった。あまりにも現実離れしている話に笑えてくる。笑いながら泣いた。
落ち着いたてきたので、スマホをみた。スマホを見るとお昼休みの時間が終わりかけていた。
急いで、ごみをまとめて屋上からでる。その時強い風が吹く、そして、「バイバイ」と聞こえた。
放課後帰宅の準備をしていると、声を掛けられた。
「ねえ、部活興味ない?」
初対面なのに話の内容が飛びすぎだろ。
「俺に話しかけてもいいこと1つもないですよ?あと、部活なんか、興味ありません」
「いや、あなたなんか興味がないの、ただ、部活を入らないかって聞いてるの?」
「冷たいですね。入る気はないですけど、何部ですか?」
聞くだけ来てみようと思った。
「そうですね、何部というか、作るんです部活を」
これまた、驚いた。少し興味が沸いた。少し・。
「えーと、何部を作るんですか?」
「気になるの?でも、入るって言わないと教えてあげないかも?」
なんで、楽しそうに言ってるんだよ、こいつ。めんどくさかったらやめればいいか。
「わかった、入りますよ」
「本当?本当に?言葉約束は約束に入らないとか言わないよね?」
「そんな、人じゃないですよ。それで、どんな部活作るんですか?」
「どんな、部活か発表する前に自己紹介しよっか。私の名前は上野雪だよ」
え、また、俺が作り出した人物なのか?混乱する。
「なあ、1回俺を叩いてくれないか?」
「え、急にそんなこと言う変態なんですか?」
「頼む」
「わかりましたよ」
パンと音が鳴る。女子高校生とは思えない威力に驚いた。ビンタの跡が付くほどに強いビンタ。夢でもなく架空の人物でもなかった。
「大丈夫ですか?誠さん?」
「ああ、ってなんで俺の名前知ってるんだよ?」
「クラスの名前を知るのって常識ですよ?」
「え――そうなのか?けど、昨日あんなことがあって俺に話しかけるのは大丈夫なのか?噂とかされてるだろうし?」
「噂?そんなことで人を評価しないですよ。後言ったじゃないですか、私はあなたに興味ないとただ、部活に入ってほしかっただけですよ」
思わず笑ってしまった。
「そっか、ところで、どんな部活か教えてくれないか?俺も部員だし」
「そうですね。なんでもやる部です」
その言葉を聞いて笑った。俺は、どんでもない人と出会ってしまったのかもしれない。
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