沢城カスミ
まず、噂を消す方法をみんなで意見を出し合った。一番可能性があったのは本人が否定する方がこの噂を落ち着かせることができると思う。という意見だったが、
誠はそんなことはしないと思う。
なので、この意見は無しとなった。次に、真美子に本当のことを言ってもらう意見があったが、誠の意志と反するので無しとなった。
さて、どうした方がいいのか。全員が分からない状況だった。
「もう、私たちだけが信じるのはどうかしら」
桜が意見を述べる。しかし、カスミがすぐに否定する。
「ダメ、私は誠の噂を消したい。どうにかならないかな」
無理な意見だった。噂は消えない。その噂を超えるほどの出来事が起きないと。
「そうね、全校生徒の前で彼を呼んでなんかさせるとか」
沙也加先輩が言う。この意見はいいと思う。けど、呼んで何をさせるか決まらない。
「私が説得して、真美子に話してもらいます。前まで親友だったので」
前まで、親友だった。私の親友は誠しかいない。彼一人だけでいい。だから、彼をどうしても救いたい。
2時間ほど、意見を出し合った結果、誠を説得して本当のことを広めるという意見に固まった。
「じゃあ、私は真美子と話してきます」
スマホで真美子に電話をする。
「今から会って話したい」
私は一言だけ言い電話をすぐに切った。声も聴きたくなかった。
私は真美子が嫌いだった。やっぱり許すことなんてできないよ誠。
近くの公園に待ち合わせ場所にした。
公園に着くと真美子は待っていた。
「ごめん。」
最初の発言はごめんの一言だった。ごめんで済んだら警察必要ないじゃん。小学生みたいな考え事が浮かんだ。
「謝りの言葉を聞きに来たわけじゃないんだ。本当のことをみんなに話して」
沈黙が続く。夕焼けとともに心が沈んで行く。
「わかった」
そう、一言だけ言う。私には分からない、なんで悲しい雰囲気になってるの?だって原因を作ったのは真美子なんだよ、悲劇のヒロインみたに重ねないで、あなたは最低な人なのに。
言いそうになってしまったけど、言うのはやめた。馬鹿みたい。親友ってなんだっけ。
「用が済んだから帰るね」
「まって、ごめんね」
「もう、遅いよ。」
鳥の鳴き声はどこか違うように聞こえた。いつもは鬱陶しいのに今日はどこか悲しく聞こえた。
これで、誠の印象が変わったらいいのに。そう思いながら公園を出た。
月曜日学校に行くと、何かが変わっていると思っていたけど悪くなっていた。
スマホに通知が届く。
『速報 誠は真美子まで脅していたと情報が入りました。いったいどんだけクズなんでしょう。まさか、カスミの友達まで脅していたとは、驚きですね。彼とは距離を置いた方がいいと思いますよ。』
この時理解した、人間は自分が一番の生き物だと。この話を知ってるのは真美子しか居なかった。
廊下で誠とすれ違う。なんとも言えない顔をしていた。おはよ、小さい声で挨拶された。返す猶予もなく通りすぎていった。
私は、馬鹿だと理解した。なにもしても無意味だと、理解するのに時間が掛かった。詰んだ。もう消すことはできない。
放課後部室に行くと。みんな顔を伏せていた。どうしても救えないと分かってしまった。こんな大事になるんだと。だって、だって。現実から逃げる理由が見つからない。
私は窓辺に座り外を眺める。なんで、誠に相談したんだろ。私が我慢すればよかったのに。
「こんな状況になっても俺と仲良くしたいと思うか?」
誠が立っていた。全員が誠を見る。
「なんで、いるのよ?やめたはずじゃ」
沙也加先輩が慌てて言う。
「いや、なんか俺も甘えていいのかなって、雪に言われたんだ、頼ってみることも大切だよって。だから、俺はここに居たい。」
頭を下げる誠を見て。私は思った。誠は本当に優しい人間だなって。そして、好きかもしれないって。
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