新たな出会い


朝目が覚めるとなぜか泣いていた。いやな夢を見た。ずっと忘れたくて逃げていたのに。胸が痛くなる。不安が押し寄せるといつもこの症状が出てしまう。

俺は深呼吸をして、学校の準備をする。朝いつも考えてしまう。

俺は何のために生きているのか誰のために生きているのか考えてしまう。

昨日の出来事を思い出し深いため息が漏れる。新崎桜。俺を変えた一人の女性だ。

なんで嫌いなのに関わってくるのかわからない。彼女なりの償いなのか。正直知ったところでどうでもよかった。桜とは、もう話したくない。そんなことを考えているともう家を出ないといけない時間になっていた。急いで玄関に行き外に出た。

エレベータを待っていると突然声をかけられた。

「誠じゃん!」

聞いたことのある声に俺は震えていた。俺は本当についてない

「久しぶり!美穂」

雪野美穂。彼女とは幼馴染で仲が良かった。あの日を境に関わらなくなった。

久しぶりに見た美穂は何も変わっていなく安心したけど、俺は変わってしまった。

「てか、同じ高校なのになんで教えてくれなかったの?」

彼女の言葉にびっくりする。俺は彼女を避けていたから、もし誰かに見られたら彼女も俺みたいな性格になってしまう。

「俺と絡んでもいいこと一つもないぞ」

「そんなことないよ!誠と話してる時が一番楽しいよ」

「じゃあ、あの時もそうして欲しかったよ。あの時ずっと孤独だった...」

つい昔のことを話してしまった。くそ、何してるんだ俺は、なんでいつもこうなるんだろう。頭で言ってはいけないと理解してるのに。

「ごめん余計なことを言った」

沈黙が流れる。俺はいつもこうなってしまう、人との関わり方がわからなくなり、

余計なことばかり言ってしまう。

「私はひどいことをした自覚があるのだから、これからはずっと一緒にいたいし前みたいに話したい」

今にも泣きそうな声をしながら彼女は言う。美穂の言っていることはわかっている俺もずっと話していたい。けどだめだ、もし関わってしまえば傷つけてしまう。

「いや、もう話すのも関わるのもやめよう」

「じゃ、俺階段から行くから。」

「まっ」

美穂の声は聞こえていたけど俺は無視をした。だってこんなに泣きそうな顔を見せるわけにはいかなかった。ずっと仲良くていつも隣にいるような存在だったけどそれも今日で終わりだ。前を向くんだ俺。そう思いながら誠は学校に向かった。

美穂は考えていた。自分の犯した過ち、助けることができなかった後悔。今私の目の前にいるのは誠だった。

同じマンションでありよく合うことも多かったけどあの日を境に誠は私を避けていた。嫌われているのも理解していた。だって助けを求めていたはずなのに私は逃げてしまった。すごく怖かったあの噂が本当だったら誠と関わりたくなかったから、逃げる理由ばかり考えていた。けど今私の目の前に誠がいる。これは神様が私に与えた救いなのかもしれない、あの日の後悔を過ちを償えるかもしれない。

「誠じゃん!」

自然を演じるように声をかけた。

「久しぶり!美穂」

誠の声は変わっていなかった。昔から聞いていた声。昔のことを思っていると泣きそうになった。それを隠すように私は言う。

「てか、同じ高校なのになんで教えてくれなかったの?」

私は誠と同じ高校に入学した。他の高校と比べ偏差値が高く毎日勉強ばっかりで大変だったけど、もう一度やり直して誠と話しをしたかったから私はずっと頑張った。

「俺と絡んでもいいこと一つもないぞ」

そんなことない、誠と話している時だけが心の底から楽しかった

。ずっといたからこそ当たり前だと思っていた。いなくなってからどこか寂し気持ちがあった。また一緒にいたいずっと笑いあっていたい。

「そんなことないよ!誠と話してる時が一番楽しいよ」

嘘偽りのない言葉を言う。

「じゃあ、あの時もそうして欲しかったよ。あの時ずっと孤独だった...」

誠の言う言葉を聞いた時私は固まった。あれ、なんでいい方向なことばかり考えていたんだろう。私がしたことは許される事ではないと頭の中で分かっているそれなのに私は甘いことばかりを考えていた。もしかしたらまたやり直せるんじゃないか。そんな甘い考えは粉々に散った。

「私はひどいことをした自覚があるの、だから、これからはずっと一緒にいたいし前みたいに話したい」

どうかお願いします神様もう一度だけやり直すチャンスを私に下さい。また彼と笑いあっていたい。だから、どうか、

「もう、」

いやだ聞きたくない

「もう、話すのも関わるのもやめよう」

ああ、もう無理だ。あまりにも時間を掛けすぎた。もう少し私に勇気があって誠を信じることができたならこんなことにならなかったのに。私は過去の私を恨んだ。

「じゃ、俺階段から行くから。」

沈黙が流れると誠は言う。私とは本当に関わりたくないのだろう。けどもう少し一緒にいたい。

「まっ」

声が届くことはなく階段を下りて行った。

エレベータが来るのがこんなに長く感じたのはなぜなんだろう。

私はエレベータに乗り一階に向かう。

外に出て空を見上げる。そして独り言が漏れる

「もし、願いが叶うなら、過去に戻りたい」

今にも消えそうな雲を見つめながら彼女は言う。

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