気持ちは言わなければ伝わらない

あの日から、俺を見る目が変わっていた。どう変わったかというと。

俺のことはいないような存在になっていた。まあ、俺が犠牲になって誰かを救えたらそれよかった。


 カスミの噂はとっくに消えて、俺の噂で持ち切りだった。食堂や、購買などに向かうと。あいつって、どの面下げて来てるの、きも、などの暴言だった。


 中学生の頃に体験しているからあまりダメージはなかった。まあ、それは嘘だ。

実際傷ついた、けど、我慢できる。俺が我慢すればいいだけだ。


放課後になると部室に向かった。部室の前に張り紙がされていた。


『クズがいる部活はここです』


 正義感のつもりだろう。ここまでやるのは異常だな。俺は紙を剥がし中に入った。


5人とも真剣な表情で話し合いをしていた。俺は決めていた。部活をやめると。

これ以上ここにいちゃ迷惑しか掛けないのだから、俺は部活をやめる


「いま、部活をやめるなんて考えていないよね?」


 雪が俺に言う。もちろん俺もここに居たい。それは無理だ。俺以外の人たちはやるべきことがたくさんある。だから俺が足を引っ張るのは申し訳ない。


 生徒会長の沙也加先輩もいる、もしだ、もし俺と関りがあったから、大学の話は無しだなんて言われる可能性もある。会長の立場も危ない。


「うん、やめようと思う。だって、もう迷惑は掛けたくないだから、許してくれ」


 5人は渋い顔をしていた。


「ねえ、本当のこと言おうよ」


 桜が口を開く、桜しか知らなかった。

 真美子が噂を流したのを知ってるのは桜だけだった。


「それはダメだ、俺の性格が許さない」


「そうだね」


 下を向く桜。


「まあ、俺がやめれば全部がうまくいく。だから、な」


 俺は部室を出た。これ以上ここに居たら迷惑を掛けてしまうから。


 そして、部室を出た後。部室内では話し合いが行われていた。


「本当にどうするべきかわからない、俺は誠の味方だ」


 みんなが「うん」と言う。


「私も味方だ。生徒会長の立場ではあるが私は彼の味方だ。純恋も世話になったし」


「私と桜は絶対に逃げないって決めた。誠が幸せに暮らせるようにしたいと思ってる」


「私もよ、私も美穂と同じ、彼には笑って過ごして欲しいだから、絶対に助ける」


 雪だけは口を閉ざしていた。


「ねえ、君たちって都合がよくない?一度彼を傷つけた立場なのに何今更助けようとしてるの。あの時言わなかったけど、桜と美穂がいるのに彼は自殺をしようとしていたのよ?なのに助けたい?その気持ちの変化はキモすぎじゃない?一番追い込んだのはあなた達なのよ」


 なんとも言えない雰囲気になっていた。


 他の4人は理解した。俺たち私たちは誠に甘えすぎている。


「けど、今この状況は私も好きじゃない、だから私たちで誠を救いましょ。その方が罪滅ぼしになるでしょ」


「うん」


 5人達の決意は固まった。必ず誠を救うと。


 そして、ドアが開く。カスミが入って来た。


「助けてください」

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