概要
その【聖女】は仮面を被り、天使のように、あるいは悪魔のように振る舞った
「何? 旧リガルド王国の話を聞きたい?」
酒場の主人は、読んでいた新聞を机に放る。
閉店前の、客がひとりも入らない、伽藍洞の酒場の中で、彼は睨みつけるように虚空を見据える。
「あの国は、それはもう酷いものだった。人を人とも思わん所業。潤うのは王族と貴族、それに連なるものだけで、平民は常に貧困に喘いでいた」
主人は訥々と語る。
あなたはもしや、そのリガルド王国に住んでいたものではないのか?
「昔も昔、大昔の話さ。俺ぁ、まだ何も分かんねぇ鼻ッタレのガキだった。そんなガキの手を引いて、あの国から逃げ出したおっ母は、道の半ばで死んでったさ」
それはなぜ?
「お前、人には思い出したくもねえ記憶ってのがあんだぞ? 無闇矢鱈と聞かねぇこったな」
それは大変失礼しました。
「いい
酒場の主人は、読んでいた新聞を机に放る。
閉店前の、客がひとりも入らない、伽藍洞の酒場の中で、彼は睨みつけるように虚空を見据える。
「あの国は、それはもう酷いものだった。人を人とも思わん所業。潤うのは王族と貴族、それに連なるものだけで、平民は常に貧困に喘いでいた」
主人は訥々と語る。
あなたはもしや、そのリガルド王国に住んでいたものではないのか?
「昔も昔、大昔の話さ。俺ぁ、まだ何も分かんねぇ鼻ッタレのガキだった。そんなガキの手を引いて、あの国から逃げ出したおっ母は、道の半ばで死んでったさ」
それはなぜ?
「お前、人には思い出したくもねえ記憶ってのがあんだぞ? 無闇矢鱈と聞かねぇこったな」
それは大変失礼しました。
「いい
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- ★★★ Excellent!!!【まさしく彼女は旅人であった】独特な語りの異世界ファンタジー!
タグにもある通り、オムニバス形式で語られる本作。物語全体を通しての主人公であるテオの扱いが独特で、各エピソードの主人公たちの物語に現れては影響を与えて去っていく、作中で語られる通り旅人の彼女。
そんな彼女の旅には善悪問わず様々な人との出会いがあり、一つ一つのエピソードの主人公たちの物語が繰り広げられる中、徐々に彼女についての人となりや目的が明かされていきます。
また、それぞれのエピソードも満足感の高いもので、読んでいて面白かったです。個人的には三番目のエピソードの発明家さんが好きだったり……。
そして、そんなテオの隣にいる少女ウミ。彼女は一体何者なのかも気になるところです。描写…続きを読む