第19章 水が怖い

港にはEさんが迎えに来てくれた。


E『大丈夫?よくなったんだべか?みーんな心配すてたんだよぉ〜』


私『すみません。ご迷惑をお掛けして。もう大丈夫です。』


挨拶もそこそこに宿に向かった。

一通り挨拶を終えて通常通り働く事になった。

復帰して2日目に異変は起こった。

何故か、海に入るのが怖くて仕方がなかった。

ウェットスーツに着がえ、ボンベを背負いいざ海へ…


私『だ、駄目だ、入れない。』


この時かなりの恐怖でいっぱいだった。

海と言うか、水につかるのがたまらなく嫌で仕方が無かった。

ダイバーにとって致命傷である。

そして…


私にはハッキリとその原因がわかった。

狐だった。

獣臭が私の身体から感じる。

あの時、あのママに抱きつかれたときの映像が頭によぎる。


そう、すでに私に憑依していたのだ。

死の瀬戸際まで行った喘息発作も、水に対しての恐怖心も全て狐だと認識した。


が、本当の事を話して信じてもらえるわけもなく体調が悪いとの理由で島から離れる事にした。

あのまま残れば私の命が危険だと感じたからだ。


第19章 Y鍼灸院


逃げるように東京に戻った私は、早速、御徒町にあるY鍼灸院に予約の電話を入れた。


何故鍼灸院? と思うかもしれないが実は此処の院長先生は知る人ぞ知る霊媒師なのだ。

もちろん誰でも見てくれる訳ではない。ある人の紹介が無いとお祓いなどはしてくれない。

私は思う。そう言う力が必要な人はそう言う巡り合わせがあるのだと確信している。


電話で話す私『先生、また憑かれてしまいまして…そ、その、よ、予約を…』


先生『声でわかるよ。今回のはきついね。今すぐいらっしゃい』


私『ありがとうございます。伺います。』


自宅から電車でおよそ30分。いつもより長く感じた。


院内に入るとヒーリング用BGMが心地よく聞こえる。


スタッフ『御予約の方ですね。どうぞこちらへ』


そしてまずは整体を施術してもらい次は針治療だ。

針治療だけでも軽い霊体は外れる。

通常の施術が終わり院長先生がやってきた。歳は70過ぎの高齢だか、かなり若く見える。


私『先生どうですか?』


先生『狐だね。自分の顔を鏡で見なさい。』


島から帰ってから鏡をみていなかった。風呂にも入れない状態だったからだ。

 

鏡を覗きこむ。私の目は吊り上がり、かなり顔色が悪い。


私『や、やばいですね。』


先生『今から払ってあげるからね』


すると何やら呪文のような言葉を唱えだした。どのくらいの時間がたったのか、いつのまにか寝てしまっていた。

気づいた時には鍼灸院は閉院してた。

1時間以上寝ていたようだ。


 私『先生ごめんなさい。寝てしま   いました。』


先生『気にしなくて良いよ。身体疲れていたからね。上手い事祓えたよ。気分は?』


すっかり元に戻っていた。かなりスッキリして爽快な気分を味わった!


先生『しかし、何処で拾ってきたの?』


私 『K島です』


今までの経緯を先生に話した。なるほどと納得したが、少し考えこんで話をした。


先生『あれは、1体だけてはないね。それから、あなたから外れた1体はそのママさんかSさんに戻っていったよ。』


もう2度と島に近寄っては行けないよと一言残しそれ以上の事はもう話さなかった。

私もこれ以上詮索すると良くないと思い聞かなかった。


私 『先生ありがとうございました。』


先生『また調子悪くなったらいつでも来るんだよ』


と言った。


料金を払い鍼灸院を出た。

因みに料金は針と整体の料金のみで、たったの5000円だ。

本当に感謝である。鍼灸院に向かって深々と一礼をし、帰路に着いた…

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