第2章 弟

それから、数年後…

私に弟が出来た。


私には、母親が妊娠している事や、お腹の大きいかった記憶がない。


何と言うか…


突然、弟が居たと言う言葉が相応しいかもしれない。なにぶん、私が4〜5歳の頃の記憶なので忘れている事もあかとは思う。


私の住んでいたマンションの向かいに保育園があり、私はそこに通っていた。


私はラッキーな事にマンションの向かだったが、遠くから来る子供達のためにマイクロバスの送り迎えがあった。


私が保育園から帰ると、弟は嬉しそうに一緒に遊ぼうと抱きついて来た。


どこに行くにもずっと着いてきて、

それはまるで私が姉に抱きつき『一緒に遊ぼう』って言っている事を思い出させた。


何故か姉は、私と弟が一緒に過ごしている時、側にいなかった気がする。


と言うか、弟と過ごしている時姉の記憶が無い。


つまり、3人一緒に過ごした思い出があまりないのである。


ある日保育園から帰宅した私にいつものように抱きついて来る弟が、


弟『ボールで遊びたい!』

私『わかった。じゃあ、1階の駐車場で遊ぼう』


1階の駐車場でキャチボールをする事に…


それが取り返しのつかない事態になる事はその時の私には知る由もありませんでした。


私の投げたボールを取り損ねた弟はボールを追いかけてマンションの敷地内から出てしまった…


人生は、いろんな出来事、そして、完璧とも言える神の与えたタイミングに左右され私達は生かされていると私は思う。

良い悪い別として…


でも、でも、何故!何故今なんだ!


私は心の中で叫んでいた!

スローモーションの様に…その光景は心な中に焼き付いて…


一生忘れる事の出来ない最悪な結末。


保育園の送り迎えのマイクロバス

ボールを追いかけマンションの敷地内から出てしまった弟…


私は全てを目の当たりにしていました。


血まみれになった弟をパニックになった運転手が抱き抱え、私の所にゆっくり近寄って来る


顔面蒼白の運転手は私に言った。


運転手『家はどこねー』と…


頭が真っ白な私は無言で家に案内する。


どこからか聞こえる救急車とパトカーのサイレン…


その後の詳細な記憶は私には無い。


覚えている事は、半狂乱に泣きじゃくる母親と今にも呼吸が止まりそうな病院のベッドに横たわる弟…


今まで、この話は私の中で封印していた事。


何故なら、全て私が悪かったと心の何処かにあったから…


時々思い出す度に溢れ出る涙を堪えきずにいた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る