第12章 再び海中へ

潜り始めてすぐにエビの巣を見つけたが、なかなか取れず苦戦していた。

やっとの思いで50センチはあるエビを捕まえた。


私『よし、この調子でどんどん取るぞ!』


と意気込んでいた。が、けたたましく鳴り響く金属音に身体が一瞬硬直した。

またもや心拍数が上がり、呼吸が早くなる。


私『早く、早く浮上しなければ…』


海面に出ると目の前に船が待機していた。

何も言わず船に上がった。


ヒロ『さっきのサメが着いてきてるから、今日は中止にしよう。』


と静かに言った。

伊江島海域から移動中、他のダイバー達は獲物の仕分けをしており、要らない魚や、売れない魚を海に捨てていた。

その血の匂いと、船のエンジン音に付いてきたようだった。


明け方になるまで沖合の浅瀬にアンカー⚓️を下ろして、少し仮眠をする事になった。


夜が白々と明けた頃、ヒロさんが魚汁を朝飯に作ってくれた。

冷えた体に染み渡ってこの上ない美味しさだった。

朝飯を食べながらヒロさんが語った。


ヒロ『俺の左足の甲を見てみろ』


と、私の前に出されたヒロさんの足の甲にはサメの歯型があった。


ヒロ『さっきのサメと比べて小さいサメだったが、アシヒレの上から噛まれてこのザマよ』


何でも、噛まれた瞬間にナイフで眉間目掛けて刺したそうだ。

刺すのが遅ければサメは足を噛んだまま頭を振り、足がなくなっていたそうだ。


ヒロさんは言った。それから何故か大きな獲物が取れるようになり、2000万以上する船も買えたと…


私を励ます為に語ったのだった。


が、私には逆効果だった。

私は心の中で『無理』と何度も呟いていた。

思い出すだけで恐怖で震えていた。

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