第6章 叔母
新しい生活が始まった私達は、福祉から生活費を頂いていてそれを叔母に管理してもらって生活していた。
姉は毎日私の為にご飯を作ってくれた。
定番で出てきたのが、キャベツをアメリカのコショウ『ホワイトペッパーとブラックペッパーを合わせたもの』
で炒めた単なるキャベツ炒めだったが、私にはそれがとても大大大好きで大好物だった。
姉は学校が終わるとファストフードでバイトし、生活費の足りない部分をカバーしてくれていた。
夏休みになると決まって叔母の兄弟の子供達が泊まりにきた。
叔母は4人兄弟の長女で、弟や妹の子供達総勢10名いる子供達の7名が泊まりに来ていた。
私も含めて年も近く皆んな仲良しでとても楽しかった。
皆んなワンパクで、ちょっとしたイタズラや悪い事もしたり…
例えば、近所の家に実っているバンシルー(グァバ)を、盗んだりセミを捕まえて爆竹🧨で爆破させたり…
今考えるととても残酷な遊びだと思う。子供とは時として残酷な要素を持っていると思う。
そんな最中アパートの一階部分に小さな祠があった。
勿論、子供ながら何かの神様を祀っている物だとわかっていたが従姉妹の1番やんちゃなやつが面白半分で蹴ったり、祠の上でジャンプしたりした。
私『それはダメだよ』
他の子達も、『お前、バチが当たるぞ!』
と言ったがやめなかった。
その日の夕方叔母が、皆んなご飯だから帰っておいでと大きな声でベランダから叫んだのをキッカケにゾロゾロと階段を上って行った。
と、その時祠を蹴っていた奴が
『痛ーい!痛いよー!』
と叫び蹲っていた。
皆んな慌てて『大丈夫か?』と尋ねるも
『痛いよ〜!』と、左足を触って動けずにいた。
まもなく救急車で運ばれていった。
複雑骨折だった。
叔母は私達に向かってこう言い放った。
叔母『悪い事をするとバチがあたるぞ!』
叔母は全てを知っているかのように言った。
そそくさと晩御飯を食べた私達は、順番でお風呂に入り、寝るまでの時間トランプやらお絵描きやらで遊んでいた。
寝る時間になり、叔母の家で寝る人。おじーおばーの家で寝る人とそれぞれ別れた。
私は姉との2人暮らしなのでうちで寝る人数は多かった。
そのうちの1人私と一番仲の良いTちゃんがさきに眠りについた。
私と他何名かは祠の祟りについて話していた。
私『祟りってほんとうにあるんだよなぁ。怖いな。』
他の従兄弟達も、『本当やべーな』何て言いながら次第に幽霊話しに変わっていった。
と、その時だった!
先に寝たはずのTちゃんがなにやら言葉を発している。
私『どうした?T?起きてるのか?』
起きてはいなかった。何の言語かわからないが言葉を発していて、時折り歯を食いしばったり身体を膠着したり…
尋常では無いその姿に私達は慌てて叔母を呼びに行った。
叔母『キジムナーに取り憑かれたみたいだね』
と言うと、Tちゃんの頭の近くに小皿に粗塩とハサミを置き、なにやら呪文を唱えだした。
すると、今まで訳の分からない言葉を、発していたTちゃんは、おとなしくなりスヤスヤと眠りに落ちていた。
叔母『これで大丈夫だから、あんた達も幽霊の話ししないで寝なさい』
と言った。幽霊話の事は叔母がわかるはずもないのに…
そんな不思議な能力を持つ叔母だったが、甥っ子にはとても甘く目に入れても痛く無いほど可愛がっていた。
Tの弟Sである。
一方で私にはかなり厳しかった。母親に頼まれた責任感なのか、テストの成績が悪いと叩かれた。
学校から帰るとすぐに勉強机に座らされ遊びに行かせてもらえなかった。
普通の小学生なら学校から帰ったらカバンを置いて遊びに行くはずなのだが…
どうしても遊びに行きたい私はコッソリ抜け出すことを考えた。
問題は叔母の家の前を通らないと下に降りる事が出来ない。
当時夏は窓は勿論玄関も開けっぱなしだつた。勿論エアコンなど無い。
忍足で、おじーおばーの部屋の前を通過。
いよいよ叔母の玄関前をそおっと忍び足…
叔母『何処に行こうとしているんだ!』
冷や汗で全身びっしょりになった。
すぐさま自分の家にもどった。
今でも不思議で仕方ない事だけど、その時叔母の姿は見えていないし、私の事も見えていないはず。
勿論ずっと私の事を監視しているわけもない。
やはり叔母の霊力は半端ないものがあるとしか言いようがない。
母が生きている時、私のお誕生日にはささやかながらパーティー🎉を開いてくれた。
唐揚げやら、ハンバーグやら、母手作りの料理が所狭しと並びお友達も呼んで楽しく過ごした。
子供心にそれは当たり前だと思っていた。
叔母と住んで初めてのお誕生日。私は友達に明日、お誕生会やるから来てねと誘っていた。
夕方になり一向に私のお誕生日の準備が始まらないので聞いてみた。
私『おばさん、何時お誕生会はじめるの?』
叔母『何が誕生会だよ!そんなもんないよさ!』
と…
そのうちプレゼントを片手にお友達がやって来た。
私は泣きながら謝った。
私『ごめんな。出来ないって』
困惑した友達は、おめでとうと言ってプレゼントを置いて帰っていった。
とても悲しかった事を覚えている。
その後も特に叔母からおめでとうの一言もなかった。
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