第10章 触らぬ神に祟りなし

友達の仕事は、日雇い労働のようなもので横浜でも工業地帯にあった為、沢山仕事はあったが専門職でも無いし、保険も無く将来に欠けるので4〜5年働いた後、辞めることにした。


何故そんな所に4〜5年もいたのか?と思うかもしれないが、初めての本土で見るもの聞くものが全て新鮮で楽しかったからだ。


住んでいる場所から一番近い都会が川崎だったので週末になると川崎に遊びに出掛けた。

昔の川崎はかなり柄が悪く夜は気をつけないといけなかったが、なにせイケイケの若造なので怖いものなど無かった。


いつものように友達と川崎で飲んで終電を逃してしまったのでタクシー乗り場に行くと、なにやらタクシーの運転手と客が揉めていた。


その客は口が悪く運転主に向かって『こらぁー!なんめんなよ!殺すぞ!』

と暴言を吐いていた。


正義感の強かった私と友達は運転主を助ける事にした。


私『どうされましたか?』

運転手『だ、大丈夫です。』

友達『大丈夫じゃ無いっしょ?』

運転手『本当に、だ、大丈夫なんで、構わないで下さい。』


と運転手


チンピラ『あんだ、てめーらは?あっ?関係ないやつは引っ込んでろ!』

私『関係あんだよ!こっちはタクシーに乗りたいんだよ!』


と言うと、チンピラはタクシーから降りてきた。


チンピラ『お前ら何処の組みのもんや?あっ?』


私『うるせーぼけ!』


チンピラ『うちの事務所近くにあるんだけど、そこで話ししよか』


チンピラのシャツの隙間から、刺青が見えた。そしてなによりも、普通とはちがう眼光のするどさに思わず後ずさった。


この人、ほんまもんのヤクザ屋さんだ。


先に気がついた友達はすでに10メートルほど後ろいた。


や、やべえ… が、ここで弱きになると余計ヤバいと思い思わず私は


私『事務所?上等じゃねぇかよ。事務所まで行かないと俺ら若僧と話できないのかよ!』


チンピラ、いや、ヤクザ『あんだとー!』


私『ちょっと待ってろ!後ろの仲間連れてくるからよ。お前逃げんなよ!』


と言い放つと、友達のところまでゆっくり歩いていった。


友達『あっ、あいつ、本物やろ?』

私『多分。酔っ払っているけど、やばいかも。』


後は目で合図し、2人でダッシュし一目散に逃げ出し事なきを得た。


なんだかんだで横浜川崎を堪能した私は沖縄のコバルトブルーの海が恋しくなって帰ることにした。

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