第4話 死地を逝く
さぁて、朝になったことだし今日も元気に前線に潜って行きましょーか。ただし、前回とは違って同行人はナシね。
で、昨日の夜から色々と考えたんだが、やっぱりちょっと調子に乗ってみようかと。より具体的には、攻撃の度に一々逃げるのではなく、前線を駆け回る方式で戦ってみよう、ということっすね。
というのも、やっぱりいつまでも安全重視で戦ってると、何も上達しないままに生きて行くことになりそうだったのよね。別に、平凡な人生なぞ嫌だと主張したい訳ではないのだが、平凡な人生だと
つまりは、現状歯が立たない敵に遭遇した時の為に、自分の力を付けたいなぁ、ということでございまして。それ故の前線、それ故の死体漁りだしね。
とは言え、結局することは殆ど同じだったりする。
なるべく気配を殺した上で死体に細工をし、それを敵陣へと放つ、のような。簡易魔法陣も大量に作成してきたし、朝ゆっくりしたおかげで昨夜の疲労もないし、ベストコンディションってやつっすな。絶好の死体
交代の銅鑼が鳴って、戦場へと駆けこむ。弱っている魔族を中心に命を奪い、その死体へと魔法陣を付与して行く。
やっぱり、誰かに守られている状況と、一人で周囲を警戒しつつ魔法陣を付与するというのは、全く精神状態が違いますねぇ。集中しなければいけない物が増えるってだけで、疲労感が凄いからね。まぁ仕方ないよね。
手早く、それでいて雑になり過ぎない程度に魔法陣を付与して行く。
半年も続けて来た作業で、前よりは格段に作業が滑らかになって来た。一年も経てば、簡易魔法陣以外も戦場で扱えたりするようになるんだろか。そしたら最高なんだけどねぇ。魔法を使って戦ってる人は
俺みたいに、直接的な攻撃じゃない魔法だと
近寄って来た魔族から距離を取り、一旦近くにいた若い男に敵を擦り付ける。彼が何かを言うと、彼の動きが一瞬加速して、魔物の首を切り落とした。
速度加速系の魔法なのだろう。戦士系の
…………やっぱり、直接的に魔物に対抗できるような手段が欲しいよねぇ。
俺も別に剣を扱えない訳ではないのだが、専門で振り回しているような人たちとは比べ物にならない下手さだったりする。焦って上手く立ち回れないことも多いし、基本的には向かって来る魔族の頭を叩いて軌道を逸らす程度のことしかできない。
最初の三か月程度は近接攻撃も出来るように頑張ろうと思っていたけど、一旦ステータス吸収で体を強くしてからという結論に至ったしねぇ。どうせ筋力がないなら振り回したところで魔族に太刀打ちできないのは目に見えてるし。
ただ、もうそろそろ剣も積極的に実戦投入して良いかもねぇ。日課の素振りは続けてるし、前よりはマシになってるでしょうし。実際に使ってみないと上達しない部分もあるだろーからね。
無駄なことに思考を割きながら、魔法陣に魔力を流して、インクを宙に浮かせ、それをそのまま死体へと付与する。集中力が乱れていたせいで若干形が歪んでいて、魔力による発光も心なしか
……………ちゃんと精神統一して作業をしましょうということで。
起き上がった死体が、味方だったはずの魔族へと襲い掛かる。血走った眼で過去の仲間に噛みついた死体は、そのまま魔族の首から先を噛み千切った。
後ろから、その死体へと別の魔族が襲い掛かる。乱暴に殴り付けられた首元が凹んで、更に追撃として腹部を蹴り上げられる。呻き声を上げた死体は、頭部が圧し折れたまま、向かって来た魔族へと掴みかかった。
仲間同士で体力を削り合っている地獄絵図を見ながら、先程首を噛み千切られた魔族にステータス吸収の魔法を付与する。
頭がないと視界不良の
生気がなくなって行く首なしの死体を視界の端に収めながら、次なる獲物を探して戦地を見渡す。気が付けば、自分の周囲からは人間が少なくなっていた。
まぁ、魔族とその死体が乱戦を起こしている地帯になぞ、誰も近寄りたくないのでしょーね。そりゃそうよね。俺だって逃げたいし。
周囲に人がいないのを良いことに、最近まで流行していた歌を軽く口
積極的に前線に留まると、やっぱり効率は良い。魔族に迫られるっていう危機は何度かあったけど、基本的に乱戦状態の戦場のお陰で、近くにいる死霊とか魔族とかに擦り付けられるし。
持っている魔法陣を使い切る勢いで、更に死体を化け物へと変貌させて行く。
死霊達が人間へと襲い掛からないように、前線へと進みながら。
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