第8話 不謹慎
昼間の戦闘を終え、宿屋に帰って来る。宿屋を継ぐ予定らしい若い男と、その妹が一階の食堂代わりの所で何やら話しているのを横目に見ながら、二階へと向かった。
途中で男に視線を向けられたので会釈を返す。
戦士の殆どがこの宿に泊まっている、と言えば規模感が分かるかもしれないが、田舎にある宿屋としてはかなり大きい建物になっている。そもそも三階建ての建物なんぞ王都でもあまり見かけないものなんだけどね。ここの宿屋は普通に三階建てで、一つ一つのフロアにもそれ相応の数の部屋がある。
ここを選んだのは、もちろん他の雑兵たちがここに宿泊しているというのが理由の一つではあるんだが、それ以上にこの規模の宿屋であれば下手に顔を覚えられるなどということがないだろうと思ったのもあった。人の出入りもかなり多いし、態々一人一人を覚えようとしたりはしないだろうということでね。
部屋に戻ると、取り敢えずカーテンを閉める。机の上に置いてあった
汚いのは承知で、取り敢えず明日まで放置。防臭剤代わりに匂い消しの薬草をその上に置いて、更に布を被せて隠す。臭いものには蓋をしろだか何だか。文字通り過ぎるけど。
机の引き出しから、少し分厚い本を取り出す。一緒に、魔法陣用の紙も。
身分の高い人たちはわざわざ高級な羊皮紙なんかを使用しているらしいのだが、魔法に使用する紙は基本的には粗悪品の紙が使用されるために、割と安く手に入ったりする。需要が高すぎるせいでかなり生産体制が整ってるらしいし。書物とかに使用される紙は、流石にもう少し上等なもので、また値段とかも変わって来るけど。
本を開いて、単語を一々粗悪品の紙に書き写しながら読み進めて行く。毎度毎度人に聞きながら読み解くというのも手間がかかる上に怪しまれる。辞書を買えるほど金銭的に余裕がある訳でもない。となると、細かく記録してそれぞれの意味を推測して行くことしかできない。
阿保みたいに手間がかかるが、自分の生命線とも呼べる情報なのでね。ここは堪えるしかなかった。
現在読み進めているのは、自分が今一番必要としている情報────魔法陣の意味内容の基礎だ。具体的に言えば、外から取り込んだ魔力がどう流れて、それがどう作用するかについての大まかな説明が書いてある。
コラムのように書いてあるのが、
自分の使用している魔法陣を横に書き並べて、それと見比べながら説明を読んで行く。そして、一つ一つの部分に印を付けたりなんなりして、どの部分が何をしているかを書き込んで行く。
作用する相手を指定する部分というのは前から知っていた通りで、それ以外にも、魔力を変換する部分、更にその変換されたエネルギーを実際に作用させる部分なんかがある。その他に書かれているのは、その魔法陣に固有のもので、具体的にどういった作用をするのかが記述されているのだと。
このページ以前にも色々と魔法陣のそれぞれの細かい部分についての解説は乗っていたのだが、全体の情報を一挙に載せてくれているページは存在しなかった。
どうしてこの纏めのページをもう少し早いところに乗せてくれなかったんでしょうか。俺の長きに渡る苦行は
なんか、魔族が段々と強くなってるなんつー話もあるし、あんまり悠長にしてると死にかねないってんで不安なんですけどねぇ。…………最近常に胃が痛い状態で生きている気がする。
これが使えれば最強、みたいな魔法がないんでしょか。死霊を強化して使えるなんていう魔法があれば、喜んでそれしか使わなくなるんですけどね。
死霊を動かすのは基本的に自分の魔力を使ってるから、ステータス吸収を一緒に使わないと魔力不足でヤバいし。何なら見境なく攻撃するから凄い使いにくいし。
…………まぁ、取り敢えずは大人しくこの本を読み進めますかね。それ以外に出来ることってなると朝の日課になってる筋トレと剣の素振りぐらいしかない。つまりはこれ以上出来る努力はないわけで。
アニメとか漫画の中での
魔力が増えれば、戦場の死体を全部一気に暴れ回らせる程度のことは出来るようになるんだろうか。それとも俺にゾンビのペットが出来上がったりするんだろか。
古すぎる死体だと体が腐ってたりしてそもそも脆すぎることもあるんだよねぇ。魔力が抜けきってたらステータス吸収も使っても意味ないし。だから強い死体を死霊にして、なんてことはしてないんだが。
どっかで馬鹿みたいに強い人間死んでないかな。そしたら
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