第15話 死霊軍
「ミア、よく聞け。ミアの故郷が危ないかもしれない。それでもしかしたら、ミアの兄も無事じゃないかもしれない。それで、俺一人が助けに行ったところで、戦況は恐らく微塵も変わらない。ただ、向かいはする。だから少し荒く走るけど、耐えろ」
何で俺はミアを背負って走っているんですかねぇ。
別に愛着とかそういうのじゃないんですけど。知っている人間が死ぬのは、この世界に来て慣れられるわけがないんですねぇ。知り合いの知り合いとかでも辛かったし。少しでも繋がりがある人のゾンビとか、最初の頃は作れなかったし。
段々色々と麻痺して来て、割り切れて来たけど。
一時間も走り続ければ、目的の町へと着いた。道中も魔族の集団に数度遭遇して、その度に、出来る限り戦闘を避けながら通り抜けなければならず。
ミアを背負っていることもあって、非常に大変だった。
町の入り口へと到着するも、門番はいない。その代わりに、バリケードが張ってあった。その周囲では魔族が大量に群がっている。
見慣れたメンツが、疲れた顔をしてその魔族と戦っていた。
近寄って、腰にかかっていた剣で魔族を避けて、道を作る。雑兵たちが戦っている場所まで辿り着くと、驚いた顔をした男たちに迎え入れられる。そりゃあそうだろうね。長い間この町を離れていたわけですし。
「受け取れ!!」
バリケードの奥にいる男に、ミアを引き渡す。投げ渡す、という方が近いけど。大工らしい風貌をした大男を狙って投げれば、男はちゃんとミアのことを受け取ってくれた。
もうこんな状況では、俺が魔族だと知られたところで何も変わらないだろう。ミアが噂を広げるより先に、この場所を離れれば良い。
「テメェ、どこ行ってたんだよ! 死んだと思ってたが、生きてたんだな!」
「野暮用でな!」
見知ったスキンヘッドの男が叫ぶ。戦力が一人増えて喜んでいるらしい。普段は話しかけてこないのにね。
「ちょっと数を減らしてくる!」
スキンヘッドの男に話しかけながら、魔族の集団を抜けて行く。
とりあえず、前線を戦場にまで戻さないといけない。でなければ、いつも通りの生活などできない。
幸い、俺の能力は一騎当千型なのでね。死体が大量に必要とかいう特殊条件のせいで使い勝手が滅茶苦茶悪いけど。
いつもの戦場まで戻って来れば、大量の魔族が詰まるようにして移動していた。この細い場所で普段留めて置いたせいで、奥まで大量に魔族の大群が見える。倒すスピードが間に合わなくなったのだろう。
魔族の群れに、端から近づいて行く。一度に大量に相手にして潰れても嫌なので、あまり魔族が寄って来ないように距離を取る。どうも、後ろの大群に押されながら移動してるせいで、あんまり身動きは取れなそうだし。
崖から飛び降り、その崖を背中に詩ながら、魔族を切り倒して行く。
使う
「
マジで、なんで英語なんですかねぇ。俺は別に英語得意とかじゃなかったから、困るんですが。どう頑張っても、発動するのは日本語じゃなくて英語で言ったときなんだよね。
…………まぁ、現地人に通じている時点で、俺が話しているのが本当に日本語なのかは分からんけどね。最早。
ちなみに、敵の選別は肌の色で行っている。というのも、俺は服を着ていて、魔族は着ていないので。偶に同士討ちが起こるのはご愛敬である。…………ご愛敬の使い方あってるか、これ?
単語一つじゃないのが面倒だが、これを地道に繰り返すしかない。もしかしたら、成長したら一度に大量に発動させられたりするのだろうか。死体の山を前にして、手を挙げれば死体の軍団が出来上がる、的な。
何それカッコいい。そうなりたい。
まぁ、新たな魔法の可能性は後で試すとして。今はゾンビを量産するのが先だね。大量に。現状打破です。
ということで、そこそこの時間が経った。現在は、崖の上から、混戦を眺めている次第である。
魔族達は、この狭い崖の隙間で、足止めを食らっている。現在考えている魔法は、魔族達が生まれた場所に帰るような指示である。魔族が基本的に記憶を持たないせいで、断念しつつあるけど。
覚えていないものは仕方がないよね。どうしようもない。
………うん、ちょっと考えたけどやっぱり無理そう。
じゃあ、大人しく大量のゾンビ作成の方が先だね。一番の目標は、一度に大量にゾンビを、適当に手を挙げたりするだけで作成する方法。
その一番の弊害は、指示の内容。別にゾンビにするだけだったら、魔力消費量がえげつないけど、出来ないことはなさそう。で、問題は味方の見分け方。
ゾンビにすると、基本的に馬鹿になるからな。元が魔族か人間かに関わらず、例のイっちゃってる目になる。だからより一層見分けがつかないんだけどね。
魔族にしても、人間にしても、それなりのサイズの脳を持ってるんだから死体にしても知性が有っても良さそうだけど。
それで生前の記憶が残ってるとかだったら嫌か。
………魔力を大量に込めたら、ちょっと知力が上がるとかないんだろうか。いつも魔法を使う時は魔力を吸われるだけだから、魔力の込め方とか分からんけど。
これは追々実験だね。まぁ、そんな余裕が出来るか分からないけど。取り合えずはミアの噂が広まる範囲から逃げないとだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます