第14話 クリス

「とりあえず、名前を教えてよ!」


「俺は、そこそこ名の通ったパーティーのリーダーを務めていた【クリス】と言う者だ。

ここは、ダンジョンのボス部屋か?

お前達は、いったい何なんだ!?」


「えぇっと……あなたを捕まえた2人は、メイドのハッピーとラッキーで!

この大ネズミが、このダンジョンのボスでラット!

そして! 僕は、この国の王子様で天楽と言います。

気軽に、ラクと読んで下さい!」


「ネズミ先生と呼んでくれても、ええんで!」


「はぁ……そうですか……」


男は、少し呆れた返事をした。


「で……君達はダンジョンで、いったい何をしているだ?」


「まぁ、色々ですね。

主にダンジョンの管理です!

危なくなった冒険者を上手く誘導したり、駆け出し冒険者にアイテムを拾わせて冒険者活動をサポートしたり……」


「それって、君達に何か得があるのか?

まぁ、それは良いとして……」


男は少し考えると


「どおりで、このダンジョンでは死者が出ないと思っていた。

君達のお陰だったのか?」


「いや、このダンジョンだって死人くらい出ていますよ。」


「そんな噂、聞いた事がないが……

まぁ、ダンジョンだ! 

当たり前と言えば当たり前だがな。」


「いや、本当に困るんですよ。

冒険者なら大勢で、入って来るから気づけるのですが……

夜中に酔っ払って、1人で迷った挙句……転んだ拍子に死なれていると発見が遅れて、蘇生魔法も使えませんから。」


「君は、蘇生魔法まで使えるのか!

いや、そんな事より……何故!? 

そこまで人間の世話をやく。」


「色々とコチラも人間が居る事で、助かる事もあるんですよ。」


「そうか、それで……そういった様な死んだ人間は、その後! どうなるんだ!?

ダンジョンに吸収されるのか? 

それとも、魔物に食わせるのか?」


「気になりますか!?」


「あぁ、気になる! 

もしかしたら、俺もそうなっていたかもしてないし……だから、教えてくれ!」


「分かりました。

では、コチラに……」


そして、僕達はダンジョン内のとある場所に移動した。


「コチラです……クリスさん。」


「コイツらは……」


そこには、腐った死体……アンデット達が

うめき声を上げながら彷徨っていた。


「ゔぅ…………ぅ……れ……ぇ……………………ぅ………れぇ………………………………………」


「それは、そうだよな。

体が腐敗しては、どうしようもない……

苦しみながら呻き声を上げる。

生きる屍と化すのか……」


「…………ゔぅ……ぅ……………れ……ぇ……く……れぇ……………………」


「はい……。

苦しむ彼らを救いたいとは、思っているのですが……

何せ、あれば、あるだけ飲みますから彼らは!」


「飲む? 何を……!?」


「くぅれー……………酒をくれ………!!!」


「はいはい、分かりましたから!

程々に、して下さいよ。」


そして、お酒を手にしたアンデット達は


「酒だ…………酒だ…………!!!」


そう言って、飲みながら踊り出した!


「コイツら、なんか楽しそうだな……」


「ええ、お酒好きの集まりですからね。

お酒さえあれば、いつも上機嫌ですよ!

それに、彼らも冒険者の救助などを行なってくれているんですよ!」


「どおりで……

たまに遭難した者から死体の様な匂いがしていたのは、コイツらが助けていたのか!」


「そう言う事ですね。」


「ところで、何故!? 

俺に、そこまで教えるんだ……

お前らには、何のメリットもないだろ。」


「いや、実は……

あなたを仲間に引き入れようと思いまして!」


「俺が、モンスターの仲間!?

ありえん! それは、絶対に断る。」


「僕は、人間ですし……

それに、あなた行く当てないでしょ!

知ってるんですよ。僕達……」



それは、数週間前……


「おい見てみろ! ラク……

また、あいのりパーティー揉めてるぞ!」


「これは、リーダー可哀想だね。

この人! 責任感があって、とても良いリーダーだと思うんだけどなぁ〜……」


「まぁ、このリーダーじゃなきゃ……

さすがに、このダンジョンでも! このバカ達は死んでるぞ。」


「だよね。

こんなリーダーなら、僕達が欲しいくらいだね!」


「いや、忘れるな! ラク……

俺達の目標は、飼い猫みたいな生活を送る事だ! そこを忘れてはいけないよ。」


「それは、分かってるけど……

この人が居れば、言わなくても色々とやってくれると思うんだよね。」


「確かにな……文句は言いながら、このパーティーの面倒事を全てやっているからな。

コイツを仲間に出来たら、楽できるかもしてないな!」


「でも、この人の目標って魔王を倒して世界を平和にする事だよね。

それと、真逆に近い! 僕達の仲間に、なってくれるかな?」


「まぁ、この手のパーティーは

叡智の書によると、大体……

仲間割れをした後に、裏切られる! 

追放もののはずだから、心配ないと思うぞ!」


「そんなに、上手く行くかな?」


「あっ! ほら見ろ、リーダーが囮に使われた。」


「ホントだ! あっ……死んだ。

僕、この人の事……急いで助けてくる!」


「気をつけていきやーーー!!!」

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