第21話 魔王

「久しぶり〜……クリス! 

聞いたよ。

僕が居ない間に、ラットにいじめられたんだってね。大丈夫だった?

ラットには、ちゃんと言っておくから。」


「……師匠!!! 

俺は、ここに来て物凄く弱くなりました。

強くなりたいです! 俺を鍛えて下さい!!!」


「えっ!? 嫌だよ。

僕、戦いとか好きじゃないし……

誰かと喧嘩した事だって無いから、普通に怖いもん。」


「師匠は、戦った事が無いのですか?

一度も……!?」


「一回だけラットと戦った事は、有るけど……

ラットだって、その時は弱かったし。

僕も赤ん坊だったから、よく分からない!」


「そんな……俺は、どうしたら強くなれるんだーーー!!!

訓練だって、毎日! 欠かさずやっている。

なのに、弱くなるなんて事があるのか!?」


「クリスは、強いと思うよ。

前も強かったけど……今は、その事と段違いに強くなってると思うよ!」


「しかし、俺は……大ネズミ如きに

何も出来ずに負けたのですよ!」


「あぁ……大ネズミね。

あいつ怖いよね! 

僕も、一回……殺された事あるからアイツ苦手なんだよね。」


『そんなぁ……

強いと思っていた師匠が、こんなにも弱い方であったとは……』


クリスは、ガックシと肩を落とし地面に膝を付いた。


そこに、ラットがやって来た。


「どうしたんだ!? クリスは……?」


「自分の弱さに、落ち込んであるみたい。」


「クリス! お前は、強いぞ!!!」


「慰めはいい……ほっといてくれ!!!」


クリスは、そう叫ぶと! 走って行ってしまった。


「どうしたんだ? アイツ……」


「君が虐めるから、ああなっちゃ立たんだよ!

後で、ちゃんと謝って仲直りしてね。」


「あぁ、オレもアイツが居ないと困るからな!

ちゃんと、謝っておくよ。」


そして、クリスはダンジョンの中を数日、彷徨った後……腐った死体に連れられて帰って来た!!!


その時のクリスは、とても臭く……

屍の様なクリスを僕達は、お風呂で洗ってあげた!


それから、数日後……


クリスは、ラットが本当にダンジョンボスだと言う事を理解すると! 少しずつ元気を取り戻して行った。



「ネズミ先生! 今日も稽古よろしくお願いします!!!」


「おお! なんか、礼儀正しくなったなクリス。」


「はい! 自分は、ネズミ先生の事を勘違いしていました。

ですので、ご指導のほど! よろしくお願いします!!!」


「えぇやん! えぇやん! 

今日もラク居なくて暇だから、少し遊んでやるよ!!!」



そして、稽古が終わりボス部屋で休憩をしている2人の元に


僕は、酔っ払って帰って行った。


「たっだい、まぁ〜……2人、とも…………」


「おかえりなさい。

師匠、だいぶ酔ってますね!」


「ラク、遅かったけど……腐った死体達にでも、つかまったのかと思ったよ。」


「ぃや、ちがぅんだょ2人とも……実は……

酒場で、意気投合した人がいて……実は……

連れて来ちゃいましたぁ〜! パチパチッ!!!」


「はぁ!!!」


「いや、師匠……それは、不味くないですか?」


「何で!? 大丈夫だよ。

しょうかいしまぁ〜す……こちらの方が、酒場で仲良くなった。

まぁーおぉーーーゔぐぅ……サンデェーす!」


「始めまして……私が…………まぉゔぐぅ……

オェーーー!!!」


「まぉゔ……ぐぅ、さん! 吐くならトイレで! お……お、ぼぐもギモヂワルイ……

おぉええーー!!!」


「……大丈夫ですか? 師匠……マオさん?」


「私は、大丈夫だ! 

心配するオェーー!!!」


とりあえず、クリスは水を用意した。


そして、2人はそれを飲むと少し落ち着いた!


「「気持ちワルイ……」」


「飲み過ぎですよ! 2人とも……

それより、この状況……大丈夫なのですか?」


「まぁ、大丈夫だろ!

お前と違って、転送で入って来たから……

ここが何処かも分からないだろうし。」


「確かに、そうだけど……

仮にも女が酔っ払って人の家に上がり込むとは、危機管理が足らん!」


「お前は、固いやつだな。」


「何かあってからでは、遅い!

今からでも、家に帰した方がいい。

マオさん、俺が送って行くから道案内をしてくれ!」


「嫌だ! 私は、家には帰らない!!!」


「何言ってんるんだ! 家の人も心配する。

今すぐ、帰れ!!!」


「クリス、まぉうサンはね。

可哀想な人なんだよ……ゔぅ……僕も、まぉうさんの気持ちが分かるから……今日だけ泊めてあげてよ……ゔぅ……。」


「泣かなくても、良いじゃないですか?」


「だって……この人の境遇……前世の僕に似てるんだもん……部下が言う事を効かなくて困ってるんだよ。

だから……そのストレスから、こんなに飲んで……君だって分かるだろ! 上に立つ者の辛さは!!!」


「まぁ、少しは察しますけど……

やはり! 女性が見ず知らずの人の家に泊まるのは……」


「うっさいな〜! 私は、帰らないと言ってるんだ! そんなに文句があるなら、君が出て行けば良いじゃないか!!!」


「ズレてるな〜この人……」


「まぁ、いいじゃねぇーか! クリス。

そんなに、他人を信用出来ないなら!

いっその事、仲間に入れてメインヒロインにでもなって貰った良いじゃねぇーか。」


「メインヒロイン……なるなる!

私は、メインヒロインになるーーー!!!」


「それ! 良いねぇーーー!!!

まぉーさん! メインヒロインになってよ!」


それから、クリス以外が大騒ぎをした後……

事が切れたように、ラクと魔王は就寝した。

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