第18話 管理

それから、数週間後……


「どーだ〜!? クリス……ダンジョンの様子は?」


「まぁまぁ、ですかね。 先生……」


「ネズミ先生な! まぁ、ええ。」


「それで、クリス! 今ダンジョンは何階層になったの?」


「今は、70階層程です。」


「70階層、凄いじゃん!!! クリス!」


「そうなんですか?

いや〜……なんかタルんでいる冒険者達を見ていたら、腹が立って来てしまいまして!

良い具合に死地に追い込んでやった所!

そしたら死地を乗り越えた冒険者達が自信がついたのか深い階層にも潜る様になったので、70階層まで拡張する事が出来ました。」


「クリスはん……お前さんは、冒険者のギリギリを狙うのが本当に上手いのぉ〜。

これからも、その調子でがんばってくれたまえ!」


「いや、それが……相談があるのですが!」


「相談……何だ!? 娘はやれんぞ!!!」


「お父さんったら……クリスさんが真剣に話しているんですから、話しくらい聞いてあげても良いじゃないですか!」


「師匠も先生も、何で!?

時たま、ふざけるのですか?

前々から気になっていたのですが……」


「いや〜……僕達、2人でいる事が長かったから! 

話す事なくなると珍劇で遊んでいたから、その癖が抜けなくてね。」


「面白いぞ! クリスも参加するか!?」


「いえ、俺は結構です!

それで、本題に入りますが……」


「はい。」「おう!」


「実は、俺は元のパーティーで真面目すぎる!

とか、頑固とかストイックとか……

まぁ、言わゆる遊び心が無いと言われていたのですよ。」


「知ってるし。僕らも、そう思うよ!」


「それで、俺なりに

あいつらの事を思い出して見たんですけど……

アイツらダンジョンをお金が稼げる遊び場とでも考えていたんですよ。」


「そうだね。僕達が安全を重視した責任もあるね……」


「いや、でも……ダンジョンを管理する上では

大事な事です!

俺も最近、それに気づき始めました。

それで、思ったのですが……

このダンジョン! もっと、安全にしたら如何ですか?」


「バカか! クリス、クリス! バカ!

これ以上、ダンジョンを安全にしたら冒険者がここに到達しちまうかも知れねーだろ!

バカも休み休み言え!!!」


「上の階層だけで、良いんですよ。

大体10階層前後、その辺りにセーフティーゾーン(安全地帯)を作れば!

俺と元の仲間達は、そこに滞在すると思うんです。

すると、黙っていてもエネルギーは吸収出来ますし……

そのエリアに、宿や店など……最終的には街が出来たらエネルギーの補給は、一生! 困らなくなる。」


「ほぅほぅ……それは、名案じゃーーー!!!」


「それならさー……

中間層にもセーフティーゾーンを作ってさー! その前に、中ボス部屋でも作っておけば、怪我した人は安全地帯に滞在して怪我を治すし……

インターバルを置いて、中ボスを復活させれば! 帰り難くもなる。

これ! どお……!?」


「さすがです! 師匠、名案です。」


「確かに、帰りたくても仲間が傷ついてたり。

先に帰ってしまったパーティーは、他の冒険者を待つ他なくなるし……ええやんか!」


「でも、2つほど難点があるのですが……」


「難点?」


「はい……

実は、そのセーフティーゾーンを作る為は10階層ほどの階層を縮小しなくてはならないのですよ。」


「そんなに!?」


「まぁ、そうだな。

ただの岩とは違い……水辺や森、植物や小動物くらいは必要だからな!

普通の階層を作るのとは訳が違う。」


「なので、一時的にダンジョンが50階層ほどに戻ってしまうのですよ。」


「まぁ、その程度なら……問題無いやろ!

今すぐ50階層に到達しそうな者は居らんしな。」


「で!? もう一つは何なの?」


「それは、国です!

そこまで、人が集まるダンジョンになれば他国からも人が訪れます!

今もギリギリだったのですが、そうなれば国もダンジョンの調査に動き始めます。

ですので、師匠達も

これまで以上に正体がバレない様に気をつけなければなりません。

あとは……この森一帯の領主と知り合いに、なりたいって言うのも本音ですね。」


「それなら問題無いよ。

僕、この国の王子様だから!!!

そっちの方は、僕が何とかしておくよ。」


「おおー! 師匠!!!

珍劇は、入ってますが……

師匠であれば間違いなく問題ないと思います!

でも、気をつけて下さい。

今、この国は国王が殺されて……荒れていますから!」


「えっ!? お父さん殺されたの?」


「お父さんでは無く!

国王ですが……まぁ、俺もたまには乗ってみますよ。

実は、そうなんです!

師匠の父である国王が殺されてから妻である王妃が変わってしまい。

城では、毎日……生死かけた殺し合いが行われているのです。」


「殺し合い!? 何のために?」


「かなり昔の話になりますが……

実は、国王と王妃には息子である王子が居たのです。

しかし、産まれて間もない頃……

身内の暗躍で、命を落としてしまいました。

2人は、嘆き悲しみしたが……

その後! 産まれた女の子、今の王女様の存在もあり。立ち直る事が出来ました!

しかし、またもや大切な人を殺された王妃様は男嫌いになってしまいました。」


『何故!? 男は戦い殺し合うのですか……

そんなに殺し合いが好きなら、好きなだけ殺し合えばいい!!!』


「そして、始まったのが無限に続く武術大会! 言わゆる殺し合いです。」


「でも、勝者が出ないと分かってるなら。

誰も参加しなくなるんじゃないの?」


「それが、勝者への褒美が……

この国1番の美少女と言われている。

娘の王女様なのですよ! 

そして……王女様を射止めた者には、もれなく。次期国王の権利も手に入る!

その2つに目が眩んだ男達が、こぞって殺し合っているのです。」


「えぇー! 僕に妹が居たなんて知らなかった。

王女は、いくつなの? 14歳くらい?」


「何で、分かったのですか?」


「僕が16歳くらいだった気がするから、少ししたなら14歳くらいかなぁ〜と思って!」


『まぁ、王女の歳くらいこの国の人なら知っていてもおかしくは、ありませんしね。

別に、不思議な事ではなかったか……』


「大体の事情は、分かった!

ほっとけないし……近いうちに、どうにかするよ。」


「よろしくお願いします。師匠!」

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