タワマンポエムバトル

2-1

「はあ」

 授業を聞いていても、全く何も耳に入ってこない。昨日のことが忘れられないのだ。

 僕の詩は魔力が弱い。いや別に魔力のために詩を作ってきたわけじゃないけど、役に立たない詩と言われればやっぱりへこむ。

 しかも、詩を創っていることがみんなにばれてしまった。「ポエマーじゃん」「お前、公園で絵葉書売るの?」「カマキリ?」だいたい思ってた通りのことを言われた。……カマキリ?

 悪魔は連続して同じところを襲ってはこないらしい。一度撃退された場所は神の魔力に満たされ、しばらくは近寄りがたくなるそうだ。ただ、詩情のある場所が別にあれば、そこは無防備である。近所にそういうものは思いつかないけれど、ないとも言い切れない。

 「その時はまたお主たちが必要になる」とムルサイセイヌは言った。僕より詩が上手い人なんて学校にもいっぱいいるだろうが、詩を書きたい人はいないのだ。

 色々考えている間に帰る時間になった。図書館によって詩集でも借りようかな。

「おぎーいるー」

 前の扉から、聞いたことのある声が。

「おぎー」

「荻原のこと?」

「作次郎が女の子に呼ばれてる?」

「なんか変てこそうだけどかわいいぞ」

 とても注目されてしまっている。

「ど、どうしたの中道さん」

「そう言えば連絡先聞いてなかったから。私今から撮影なの」

「はあ」

「修業よ」

「え?」

「詩の練習!」

 撮影と練習は全くつながらないのだが、まあ何かをするのだろう。実際朗読もうまくならないといけないとは考えていたところだ。

「わかった。行くよ」



「ここで練習?」

「そう。まずは今日の撮影するから」

 公園の芝生の上。中道さんは、かばんから棒の束のようなものを取り出した。よく見ると三脚だった。そこにスマホをセットする。

「ちゃんとした機材だ」

「本当はもっとカメラとか欲しいとこ」

 てきぱきと撮影準備を進め、なぜか中道さんは制服を脱ぎ始めた。

「ちょっ、ちょっと」

「なに慌ててんの」

「な、なんで下にそんな派手な……」

 脱皮して現れたのは黄色と青がストライプになったワンピースだった。

「覚えてもらうためには、印象付けなきゃ」

 動画投稿って大変なんだなあ。

「頑張ってね」

「呑気! 自分もやってみたらと考えて見といて」

 そう言うと中道さんは、天に右手をかざした。

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