1-6
僕が詩に興味を持ったのは、テストがきっかけだった。テストに出た詩が、つまらなかったのだ。
なんで、つまらない詩がいい詩として残ったのか。詩って、何が評価されるのか。
図書館で詩の本を借りて、面白い詩もあると思った。詩の雑誌を買ってみたら、色々な詩があるとわかった。
つまらない詩があるのではなくて、僕がつまらないと感じただけかもしれない。
色々と読んでいくうちに、自分でも創ってみたいと思った。ただの詩じゃない。現代詩と呼ばれるものを、僕でも創れるのかが気になったのだ。
僕はいつしか、詩人になりたいと思うようになっていた。
それから詩を創るようになったけれど、認められるようなものを書いたことはない。そもそも、評価される場に出したことがほとんどないのだ。一度だけ「悪童詩人」というコメントが厳しいと評判のサイトに投稿したことがある。本当にコメントが厳しくて、怖くなって一度でやめた。
雑誌や賞には、まだ出せていない。評価されるはずがないと思って、尻込みしているのだ。「詩の歴史を学んでいない」とか、「切実さが足りない」とか、そういう選者の評をよく見かける。だから詩の歴史を学ばなきゃ、切実さを表現しなきゃと思って、「まだ足りない、まだ足りない」と思って投稿できていない。
そう、僕には何の実績もない。
勢いで名乗り出てしまったけれど、おこがましかったのだ。僕は全然詩人ではないし、何の創作者とも呼べない。
ただ、詩のことが好きだ。現代詩が好きだ。
「やります。即興で詠みます」
「早く頼むぞ。体育館と共に全てを破壊されかねん」
「はい」
気合を入れて、息を吸う。まだ何も思い浮かんでいない。推敲もできない、思いついたままの詩を言葉にするなんて、どうやっていいかもわかっていない。
けれども、できない、とは思わなかった。なぜなら、今までにない体験をしているから。それを言葉にすれば、きっと詩になる。
「悪魔は怖い
作 荻原作次郎
人間とは何だろうって考えるとき
頭の中には動物とかロボットとか宇宙人とか
そういうものが思い浮かぶけれど
今僕の目の前には
悪魔がいる
人間ってなんだろう
人間ってなんだろう
悪魔はとても怖いけれど
人間は少ししか怖くない」
詠んだとたん、僕は膝から崩れ落ちた。何だこの詩は。幼くてつたない……
「うむ、先ほどよりも良いぞ」
「えっ」
「魔力は弱いが……逃げのない、未来を感じる詩だ」
「うそ」
赤と白の渦の動きが、ゆっくりになる。そして表面がらぬらとてかり出した。
「お前の魔力は粘り気を生むようだな」
ムルサイセイヌの魔法が、悪魔の魔法を包み込んでいく。いや、溶かしている?
「すごい……」
「すごくはない。魔力が足りないので工夫しているのだ。跳ね返さない以上、包み込むしかない」
悪魔が咆哮した。魔法を放つ手に力を込めているようだった。しかし、黒い靄は渦に絡めとられて、お互いの魔法がその場から消滅した。
悪魔はまだいる。
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