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「では、先生が何とかしてやるからな」
「せんせー、詩とかできんの?」
「先生は先生なんだぞ。読めるに決まっているだろう」
玉村先生が一歩前に出た。
「よし、では詩を読んでくれ」
「ゴホン。えー、雨ニモ負ケズ……」
僕と中道さんは思わず顔を見合わせた。この出だしは、1年生の時に授業で習った詩だったのだ。
「ちょっとせんせぇ、それ他人のじゃね」
「え、駄目なのか?」
「駄目だ。アタシの力の源は、あくまで生きている人間から立ち上る詩情だ。他人の詩を読んでも力にはならん。教師なんだろう、今すぐ自作を発表するのだ」
「……ない」
「あん? 聞こえんぞ」
「小学生の授業以来、詩なんて作ってない。私には到底作るなんて……」
「なんと嘆かわしい! もういい、下がれ。次だ」
「あの、僕が……」
恐る恐る手を挙げた。どうも中道さんには任せられないと思ったのだ。ムルサイセイヌは、さっき「詩情」と言った。それが魔力になるならば、中道さんより現代詩を作る僕の方が適任ではないか。
「ふむ。頼むぞ。特大の一発で決着をつけたい」
「で、では。恥ずかしいな……
空転する境界
作 荻原作次郎
錯綜した後に混乱して
通過を許可した迷走が
変化していく その先に
時代の感覚が狂う
(以下略)」
詠んでみると、意外と気持ちがいい。今まで誰にも知ってもらえなかった作品を、三人にとはいえ聞いてもらえたのである。
みな、表情は険しいけど……
「まさか、このレベルとは。しかし背に腹は代えられん。その詩情、借り受けるぞ」
ムルサイセイヌの手の中に、水色の光が現れた。
「おお、なんかすごいじゃん」
ま、魔法が見られる? すごいワクワクしてきた。
「とりあえずくらえ!」
大声と共にはじき出された水色の球が、ひょろひょろと飛んでいき悪魔の右足にぶつかった。ペチャっとした感じで、悪魔が足を気にして手で振り払おうとし出した。
「え、なんか地味……」
「今の魔法は『
「あ、あの程度……」
「お前の詩は魔力が弱い」
なんか、すごいショックである
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