ふと思い出す、あの時の出来事。それはきっと、「事」ではなく、「想い」が心に焼き付いてしまうから起こるのでしょう。 これは、そんな掌編です。 時に苦く、甘く……もどかしい痛みを伴うかもしれない想いが、円熟しきる直前のきらめきを放って、密やかに、いつまでも、読後の胸に降り続けます。
美しい文章で描かれた美しい物語です。『もしも、あの時・・・』僕にも、そう思って悔いている思い出があります。皆様にもあるのではないでしょうか?『もしも、あの時・・・』心の片隅に残る淡い気持ちが刺激されるでしょう。
どうしてあの時、声をかけなかったのだろう……月日とともに降り積もり、心の澱となってわだかまっていく後悔の念。言葉でしか伝わらない気持ちを小説という媒体で届けようとする可能性に賭ける想いがなんとも儚い。互いに別々の思いで書いてきた隣り合わせの小説がかけがえのない関係なんて切なすぎます。それを少しでも和らげるためなのか、最後は夜空を眺めて、お互いの眼差しが美しい月で繋がっていると私は信じたい。季節問わず、爽やかな読後感が得られます。ふと月を見る機会があれば昔を懐かしむ――そんな情趣が心地よい美しい物語です。
あまりにも美しい思い出に捧げる恋文(こいぶみ)。彼は、自分のことをスッポンかなにかのように感じて、気後れしてしまったのだろうか。そんな気後れさえ、懐かしい思い出になる。どんなに遠くても、夜をそっと見守ってくれる、静かな光を想う。…こんな綺麗な思い出、自分にはあっただろうか? ちょっとうらやましい。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(102文字)
いい意味でエッセイの様に素直に自身のその場での行動や気持ちを思い出し、後悔する主人公その時話しかけていれば、今とはまた別の未来があったのは間違いないでしょうに……そういうやきもきした気持ちを持たせるのは、自分もこの様な後悔が沢山あるからでしょうそんな多かれ少なかれ誰しもが持っているだろう過去を思い出してしまう逸品です
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