隣り合わせの小説たちは、今日も月を眺めるのだろうか……


どうしてあの時、声をかけなかったのだろう……

月日とともに降り積もり、心の澱となってわだかまっていく後悔の念。
言葉でしか伝わらない気持ちを小説という媒体で届けようとする可能性に賭ける想いがなんとも儚い。
互いに別々の思いで書いてきた隣り合わせの小説がかけがえのない関係なんて切なすぎます。

それを少しでも和らげるためなのか、最後は夜空を眺めて、お互いの眼差しが美しい月で繋がっていると私は信じたい。

季節問わず、爽やかな読後感が得られます。ふと月を見る機会があれば昔を懐かしむ――そんな情趣が心地よい美しい物語です。

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