もう、思い出の中にしかいない人。
たくさん抱えた思いの丈に比べて、僅かな関わりしか持てなかった人。
どうにもならないこと。
人生の前方には、ないこと。
本作は、そんな追憶の物語です。
高校生のころ、文集に自作の短編小説が隣あわせに並んで載るだけの同級生。
一方的に意識していた人。
後年その人を見かけたことの気持。
本作にはそんな彼女への追想が綴られています。
追想は既にない事実が置かれた場所。
一抹の寂しさや後悔の混じった追憶は忘れがたいものなのでしょう。
人は、どうしてそんな〝切なさ〟を憶えておくのでしょうか。
ままならない気持は何の役に立つのでしょうか。
正直に言うと私にはわかりません。
読み進めて迷うときに、本作に記された一文が目に留まりました。
〝あの関係が僕の精一杯で、かけがえのないものだった〟
そう心の整理がついたのか、整理したのか。
本当のところは本人にしか知りえないことです。
私に浮かんだのは────
〝追憶からは、きっと優しい気持がやってくるのだろうな〟
そんな思いでした。
切なくも美しい僅かな悔恨を抱えた若き日の追憶。
学生生活のエモい瞬間。
そんな情景が、綴られた綺麗な物語があります。
本作です。どうぞご覧ください。