第2話 声?

 



 ごろ、ごろごろごろ。




 のど、鳴ってるや。可愛い!

 いっぱい撫でであげる。

 ひぐれに会えてうれしいな。

 

「よる、寂しかったんだ。よかったあ、ひぐれが来てくれて」


 でも、いっぱいしょんぼりしてたのはナイショだよ?

 ひぐれとよるだけのヒミツ。


 指きりげんまんはできないから、肉球ぷにぷにぷに。お手手を上下に、にゃんにゃんにゃあん。はい、よくできました! でもウソついたらカツオブシはお預けなのです、うふふ。


 あ。


『ひぐれ』と『よる』のコソコソ話って、おもしろいね。


「ひぐれはいつもここに来るの?」




 にゃん。




「あはは、お返事みたい! 『そうだよ』とか『今日だけ~』とか? ……それとも、ひとりぼっちのよるが心配になった?」




 うなあ。




 あ、おひざの上に来た。

 くりくりしたお目目、いいなあ。


 でも。


 本当に心配して、近くに来てくれたのかも。

 ひぐれ、優しい。

 泣きそう。

 嬉しい。


「えへへ……そんなそんな、やっさしーひぐれに、よるからのプレゼントです! 林間学校で使うカツオブシがあるんだあ! 食べる?」




 にゃあ。




「ふふふ。おすまし顔を、ごろにゃんごろにゃんさせましょう!」


 カツオブシ、カツオブシのパック……あった!

 するするーって、開けちゃいます。




 ……うなあ!

 うなあああああん!

 

 ごろごろごろごろ!

 ふうう、ごろごろごろ!




 すっごいごろごろ言ってるう!

 つ、爪、痛たたあ?!


「待って待って! はい、どうぞ!」


 ふがふが、ごろごろしてる!

 手の平、くすぐったい!


 でも喜んでるみたい、よかったあ。

 ちっさいひと袋、ぜーんぶ食べていいからね。


「よるも、持ってきたおやつ食べちゃお! 何食べよう!」

 

 ひぐれと一緒におやつしよっと!


 あ、そうだ!

 コンビニで買ったロールケーキ!


 林間学校に持っていくと違うお菓子持ってけないからね。

 食べちゃうのです!


 いただきます。

 やーん、ふわふわの甘々!


 ゆくりゆっくり。

 よく噛んで、味わってえ。


 ……それで。


 おやつ食べたら、ひぐれと一緒に帰ろっかな。


 よるがお部屋にいないって知ったら、お父さんとお母さん、迷子になった時みたいにいっぱい汗かいて探しちゃうかも。お父さんとお母さん、また泣いちゃったらどうしよう。


 よるがしたいことって、そんなこと?

 ううん、違うよ。


 それに。


 お父さんはお母さんが大好き。

 お母さんもお父さんが大好き。


 大好きなのに、ケンカしてる。

 ケンカなんてしたいはずない。

 

 なら、止めないと。


 よるもお父さんとお母さん、大好きだもん。

 負けてないもん。


 よるの頑張りが足りないんだ。

 ちゃんと、もっと。


 お話を聞いて! って。

 お話を聞かせて! って。


 よるが気合いを入れないとダメなんだよ。

 むん。

 




 ……!!!




 ね、ひぐれ…………え?

 キョロキョロして、どうしたの?




 ふ、うううぅぅぅ。

 う、なああああああああああっ!!!




「どうしたの?! こわい声出すのやめて!」


 上?!


 木も葉っぱしかないよ?

 もっと上……お星さま?

 やだあ、こわいよ!

 


 

『お願……! お願い……誰か……』




 声?

 女の人の、声?


 ひぐれが見てる方から……上、誰もいないよ!

 ユーレイ?! 

 

「きゃ……」



《よる! 落ち着いて!》



「ああ……えっ?」


 男の人の声も聞こえる?

 誰?

 ユーレイいっぱい?!



 

《ファルル! 和樹! 《ヒグラシ》》だ! ラナの声が世界線を越えてきた! それにグランディアから引っ張られてる感じがヤバい! 早く! よるを!》



 

 これ、誰の声?!




《よる、僕を離さないで!》




「え? ひぐれが喋ってるの?! でも待っ、て……きゃあああああっ! 落ちる! えっ?! ひぐれえ! お父さん! お母さん!」









 

 

『誰か、あの子を助けて!』










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