第19話 シュトラッド王国と魔人

「そうだ。10年前の戦争の時は忘れもしない。我らが勇者の軍と戦って互角、もしくは優勢の時には姿形も見せぬくせに、毎回我らが敗色濃厚になると、どこからともなく現れては逃げ惑う者達に追い打ちをかけた卑怯者共だ」

「すまない、アイツらには僕らも手を焼いてた……ってのは男らしくないな。本当にすまなかった」

「もう過去の事だ。それにお前を責める為に言ったのではない」


 ひぐれが頭下げてる。でも……ごめんなさいって逃げる人たちを追いかけるようなひどい人たちが、今回のミッションに関わってるってこと?


「でもさ。卑怯な真似が得意で、小さな手柄を大きく見せては勝ち誇るくらいしかできないヤツラだぜ? 最近になって力をつけたってことなのか? 魔王軍や共和国の精鋭を打ち負かすほどにか?」

「……奴らが10年前、忽然と行方をくらましたのは知っているか?」

「マジか!」

「ああ。お前が勇者と女神と共に旅立った後だ」


 む、また誰かが見てる気がする。目印を探さなきゃいけないのに、もう。そうだ、ぼー、してみようかな。


 ぼー、てくてくてく。

 ぼー。


 あ、またいなくなってる。むむむ、これはよるに対する挑戦ですね! 残念。隠れん坊はよる、どっちも得意なんですよ? ふふふーんだ。それにこっちは四人いるもんね。すーぐ見つけちゃうんだから!


「フォルカ君。ひぐれとゴートさんのお話聞きながらでいいから、よると一緒に隠れん坊してる人、探してくれる?」


 くうん?


 お耳、ぴくぴくしてキョトンとしてる。そっかそっか、わからないよねごめんね。


「こっちから見えないように隠れてる人を見つけるの。ひぐれとゴートさんは何も言ってないから気のせいかもしれないけどね。よるが指をさした方を一緒に見てくれる?」



『一番手柄を立てた自分たちが国を治めるってアイツらが聞かなくてな。みんなと力を合わせて平和な国を作るか、グランディアと関わりのない場所で暮らすかどっちかにしろって選ばせたんだ。んで結局は二番目を選んだ。だが僕らが日本に行くまではいなくなったって報告はなかったぞ?』

「勇者が帰還してすぐのことだ。各国に復興支援の物資を運ぶ部隊から『シュトラッドの外門が無人で入国ができない』と報告があった」

「むむっ。フォルカ君、あっち!」


 がうっ!


 あうう、ちらっと見えた気がしたのに。でもフォルカ君さすが! よるが指さした方、すっごい速さで見てくれた! これならすぐ見つけられそうだね!


 で、ふむふむ……誰もいなくて通れなかったと。


『で、誰かを向かわせたのか』

「調査団が向かった。シュトラッドは何を仕掛けてくるのかわからぬから、護衛兵団を連れてな。その兵団の分隊長として私も同行している」

『それでどうだったんだ?』

「外壁の近くで2日野営し、仕方なしに無人の外門をこじ開けてシュトラッドの中心に向かった。だが……王、役人、軍隊がいなかったのだ」

『上の人間が国を捨てたってことか。ひどいな』

「ねえひぐれ、国を捨てるってどういうこと? ポイってしちゃうの、あっフォルカ君あっち!」


 ぐるう!


「よる姫様、何をしておいでですか?」

「あー、また消えちゃった。隠れん坊うまいなあ、でも負けない!」

『そうそう、気になってた。フォルカと遊んでるの? 今はミッションの途中だから森を脱出することに集中しないと』

「気のせいかもしれないけど、誰かに見られてる気がするの」

『え? 僕は何も感じないぞ?』

「私もです。どちらの方角からですか?」

「あっちだったりこっちだったり。うーん、ゴートさんとひぐれがわからないなら、よるが気にしすぎなのかも」


 目じるし探しの方が大事だよね。


「いや、気のせいではないかもしれません」

『何だって?』

「戻ってきたシュトラッドの魔人が使う魔術は我らの知らぬものが数多く存在する。主にレグレラ大陸の魔法らしい」

『は? アイツら海を渡ったのか?! そんな根性があるんなら、自分達の為じゃなく国や人の為に使えよ……』

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【ドラゴンノベルズ】夜璃と世界のファンタジア ~異世界帰りの勇者と女神を親に持つ、優しくて一生懸命な女の子のお話~ マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

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