【ドラゴンノベルズ】夜璃と世界のファンタジア ~異世界帰りの勇者と女神を親に持つ、優しくて一生懸命な女の子のお話~

マクスウェルの仔猫

第1話 よるだって、大事なことを言えるんだよ?

 よる夜瑠は……世界……呼……!!

 旅……無理……!



 お父さんとお母さん、またケンカしてる。

 先週くらいからずっと、ずっと。


 これじゃ、眠れないよ。

 明日は林間学校なのに。


 二階まで聞こえてきてるからね?

 隠したって、ケンカしてるのわかってるんだから。


 でも。


 トイレに行くフリしてわざとすこし足音を大きくすると、普通のお話みたいになる。


 だけど。


 しばらくすると、またケンカしてる。

 

 お勉強頑張るから、次のテスト頑張るからって言っても、お花を飾ってみたり、いっぱい笑うようにしても。


 お父さんもお母さんもその時は頭を撫でてくれたり笑ったりするけれど、それだけ。夜にまた、ケンカしてる。


 ねえ、お父さん。

 お母さん。

 

 私、怖いよ。

 ケンカしちゃヤダ。


 お父さん。


 いつもみたいに、にこにこ笑って?

 しょんぼりした顔で笑わないで?


 お母さん。


 また、お仕事お疲れ様って、ぎゅーってしてあげて? よるのぎゅーだけじゃお父さん、さびしそうだもん。


 お手伝いするから。

 仲直りのためにがんばるから。


 だから。

 だから。


 よるのことを見て?

 よるのお話を聞いて?


 よるは、大事なことを教えてもらえないの?

 よるだって、大事なことを言えるんだよ?


 さびしい、よ。




 よるは悪い子になっちゃいました。

 こっそりとお外に来ちゃった。


 だって、何かひとりぼっちな気分。


 でも。


 こうなったら、よるだって泣いてばっかじゃないもんね。心配して、二人で探しにくればいいんだよ。


 へへーん、だ。


 林間学校のリュックも持ってきたし、スマホのバッテリーもOK。何かドキドキする!


 いつもとちがう、いつもの公園。学校帰りにはいっぱいいる大人も子どもも、誰もいない。


 この時間に一人で外に出たことないからフシギ。見つかったらおこられちゃうかな……。うちのすぐそばの公園だから、大丈夫だよね。


 あ、少し元気が出てきたかも。


 風がふわふわ~って、気持ちいい。

 葉っぱと葉っぱが、さわさわっておしゃべりしてる。


 そうだ!


 このお話をお父さんとお母さんにしたら、笑ってくれるかも!


 今週、三人で公園に来て。

 もしお休みの日だったらお弁当食べて。

 

 そのうちにお父さんが、お母さんにごめんなさいするの。

 しょんぼりした顔で。

 お母さん、ごめんねって。


 そしたらお母さんはあわてて、お父さんの手を握るの。

 いっぱい怒ってごめんね? って言うの。


 それでそれで!


 しょんぼりした二人に私が抱きついて、もー終わり! いつものお父さんお母さんに戻って戻って! って言えばケンカはおしまい!


 ケンカは……もう。

 おしまい……。


 ……ぐすっ。


 

 


 にゃあん。





 ……あ!

 ひぐれ!


 いけないんだあ、こんな遅い時間にお外出て!

 あ、よるもでした。えへへ。


 真っ黒さんだから夜だと見つけにくいね。


 うりうり。

 うやうやー。


 えへへ、ふさふさのふわふわが気持ちいい!

 もうちょっと、さわらせて!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る