第9話 こういう時のよるは強いのだ

 がうう。




 寝そべったままでよるを見てるちっさい銀のもふもふわんちゃんは怒ってるみたい。


 でも。

 でも、ですね。


 きっと痛くて苦しくて、早く治してって言ってるのかも。よるががんばらないと!


「大丈夫? よる、お薬と包帯持ってるよ! お母さんがリュックに入れてくれたの!」




 ぐ、るる……。




「無理しちゃダメだよ! 起き上がらなくていいから、ちょっと待っててね」


 お母さん、よるが転んだ時にどうしてたっけ……。確か傷を消毒して、バンソーコウか包帯でしょ? 


 そのあとでヒリヒリして痛くって泣いてたよるにぃお母さんは……そうだ。背中をポンポンってしながらお歌を歌ってくれたんだ!


 それでどんどん痛くなくなって、気がついたら寝ちゃってたんだ。 お母さん、お歌じゃなくって祈りだって言ってたけど、何が違うんだろ?


 でも、まずは消毒ですっ! 


「あう。右の足が両方とも血が出てる、痛そう。血、怖い……でもでも痛いのもツラいのもよるじゃない」


 こういう時のよるは強いのだ、むん!


「痛かったね怖かったね。もう大丈夫、お手当してあげるから待っててね」


 この子のお名前、なんて言うんだろ。女の人が探してたのはこの子だよねきっと。助けて、だもんね。この子ケガしてるもんね。そうだよ、うん。


「もふくん、消毒するね。ちょっと痛いかもだけど我慢してね?」


 まずは前足、そっとだよ?




 ぎゃん!!!




いたぁっ!」


 か、かま、嚙まれたっ!!!


「ご、ごめんね、痛かったよね。はい……いたた……次は後ろ足だよ。また痛いかもだから、噛んでていい、よ?」




 …………きゅーん。




 あ、離してくれた。

 

「ごめんね、しみたでしょ。よるは大丈夫だよ? これで痛いの一緒だから、我慢して消毒しちゃおっか!」


 すごくいい子。ごめんね、もう少しだからね?


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る