第8話 森、行きますっ!

 森、行きますっ!

 

 あ、そうだ。お父さん言ってたよね。林間学校でもし万が一どうしようもなくしょうがなく、森の奥に入る時は……何だっけ。えと、迷子にならないように、木に目じるしをつけておくんだっけ。お父さん何回も言ってたなあ。


 遊園地じゃないんだよ? 森で迷子になったりしないよ、よる慎重だもん。でもお父さん心配するしなあ、つけよっか。お父さんのオススメのひも、ババーン!


 オッケー! まさか林間学校に行く前に使うとは思わなかったけどね!


 他に何て言ってたかな。お外で探し物をする時はキョロキョロするより、ぼーっと見てたほうがいいんだっけ。これはお父さんと一緒にやったことあるからわかる。


 あとは……あ、もしかしてリュックの中に……あった。じゃじゃーん、かいちゅー、でんとー! えへへ、よるのリュックは無敵なのです!

 

 それでは、出発!



 ぼー。

 たたた、ぼー。


 こうしてると、真っ暗も少しこわくない。だからって、ひぐれ飛び出てこないでね!


 ぼー。

 走りながら、ぼー。


 お父さん、何でこんなこと知ってるんだろう? そういえば、ゲームしてる時も変なこと言ってたっけ。『俺のほうがこのキャラクターより、もっとすごいワザ使えるけどね! こういう風に呪文を言うんだ!』


 とかブツブツ言って、ゲームのしすぎだよ。しかもお母さんに耳つねられて泣きべそ。ぷぷぷ。お父さん、本当にカワイイ。


 でもお母さんも『お父さんもスゴイけど、私もスゴイの使えるんだからね!』って言ってたっけ。いいなあ、よるも魔法使いになりたい。

 

 ん? 目のすみっこで何か動いた。


 ちっさい、動物? 立ち上がろうとしてるけど、すぐにまたすわっちゃう。もしかしてあの子がそうなのかな。ケガしてたら大変!


 ホータイならリュックに入ってたはず。でも違ったらどうしよう。よるは敵じゃなくって助けに来たんだよ!


 かんじゃヤだよ? よる、やせてるからきっと食べてもおいしくないの。お菓子あげるから許してね。


「も、もしもーし。フォルカくんですかあ~?」 




 ぐるるう!

 



 怒ってるう?! でも、モゾモゾ動いてるだけで起きない。大丈夫だよ! よる、お薬セットも持ってるんだよ!


 いっしょに森のお外に行こう? お姉さん心配してるよ? よるが抱っこして連れてってあげる。

 

 

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