第17話 森の境界

 ひぐれ、よるのことだけじゃなくって何でもわかっちゃうんだ。それにそう言われると……いろんなことがひぐれの言うとおりだと思う。


 だって今までお父さんとお母さんがよるの前でケンカするところなんて見たことがないし、内緒のことだって……よるが待ちきれなくてお誕生日のプレゼントのことを先に聞いた時とか、そのくらいしかないもん。


 それにそんな時はお父さんとお母さん、楽しそうによるの頭を撫でながら『内緒だよ』って笑ってた。そうやってよるをドキドキびっくりさせて、でも最後にはみんなで楽しい時間を過ごしてたでしょ?


 ……お父さんとお母さんはいっつもよるにたくさん、たくさん幸せをくれる。よるが笑ったり泣いたり怒ったり、わがまま言ったりねたりしょんぼりしたり跳びはねたり、寂しかったり甘えたりしても、ううん、どんな時でも。


『よる、おいで』って。

『私たちの大切なよる』って。

『大好きだよ』って。


『生まれてきてくれてありがとう』って。


 大好きで大切なお父さんとお母さん。家族にしてくれてありがとう、って言いたいのは、言わなきゃいけないのはよるなのに。


 よる……最低だ。ひぐれの言う通り、あのケンカには理由があるんだ。きっとよるに聞かせられない理由があったんだ。


 お父さんお母さん、ごめんね? 謝らなきゃ。謝らなきゃ、謝らなきゃ謝らなきゃ謝らなきゃ……バカバカバカ、よるのバカ!


『はいはい。よる、そこまで!』

「ぐすぐす……だ、だって……」

『また半ベソになってるけど、反省はあと、後!』

「よる……お父さんとお母さんにヒドイこと言ったんだよ? 早くごめんなさいしないと!」

『うんうん、わかるよ。わかるけど、でも今はこの森を無事に出るってミッションの真っ最中だ。フォルカと……に僕達が帰ってくるのを待ってるヤツがいる。だから、これを成功させたらみんなでゆっくり話そう』


 そうだ。早くこの森を出てフォルカ君を無事に女神様のところに連れて行くのが先。せっかくみんなで頑張ってるんだから。


『僕も謝るからさ。なあに、みんなそれぞれ悪いところもいいところもあったから大丈夫大丈夫。僕の予想では、よるが謝る前に和樹とファ、ファークション! 春が「「ごめんなさいっ!」」って言うと思うけどな!』

「うん、わかった! 今は森を出ることを頑張って、後でいっぱいお父さんとお母さんにごめんなさい、するっ!」

『いい子だ、よしよし。ま、そんな訳でゴート、それにフォルカも待たせたな』

「…………いや、いい」

「ゴートさん、フォルカ君、ごめんなさい」

「いえ、お気になさらず。ですが……」


 わふう~!


 フォルカ君が高くジャンプした。私も飛んじゃえ、ぴょーん! えへへ! フォルカ君、本当に元気になってよかった! ……でもゴートさんは周りをキョロキョロ見て首を傾げてる。どうしたんだろ?


『おいおいおい。まさか道に迷った訳じゃ無いよな? しっかりしろよ全くもう……』

「そんな訳が無かろう。普段のそそっかしいお前と一緒にするな」

『何だとぅ!』

「おかしいと思わぬか?」

『マジでムカつく……あん?』

「この森は広くない。だがこれだけ走ったというのに境界に辿りつかぬはずがないのだ」   

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